理想は夢のなかで、現実は空のなかで
三日月静
第1話
物心着いた時に好きだったのは絵本の中のお姫様。
白馬に乗った王子様が迎えに来てくれる、そんな在り来りな物語が好きだった。
でも、現実には白馬の王子様が居ないことを知っていたから悲しいともなんとも思わなかった。こういうのって悲しんだ方がいいのかな、なんて心の片隅にでも置いておこうかな、なんてお姫様が王子様を思うような気持ちで考える。
そんな気持ちにさせる物語が好きだった。
少しだけ景色が変わるとアイドルを好きになった。
国民的アイドルと呼ばれる彼らは、彼女らは輝いていた。
そんなアイドル達に憧れた。
自分も歌を歌って、踊りを踊って、衣装を着て、所詮真似事と呼ばれるものをした。
小さい子のそういうのは背の高い人達にはとても喜ばれるものであると同時にどこか輝いては見えなかった。
今思えば、アイドルに憧れたんじゃなくて”歓声"を浴びるアイドルに憧れたんじゃないかなって思う。
同じアイドルだけど、何かが違う。
騒音がする脳では言葉にするのが難しい。
あー、この話はここまでにしよう。
とりあえず、小学生ぐらいまで成長させよう。
小学生になりたての頃って、友達ができる不安とか、学校ってどんな場所なのか、ワクワクする気持ちが溢れるのが割と普通なんじゃないかな。
でも、あくまでこれは理想論。
夢の中のお話。
いや、所々現実でもあるかも。
自分が小学生になった時、友達ができる不安とかもなかったし、学校がどんな場所なのか知っていたから理想の小学生ではなかったかもしれない。
あ、でも、ワクワクした気持ちはあったと思う。
大体の小学校の事は、三つ離れた姉がいたから姉がほとんど教えてくれた。
だから、ほとんどのことを知ってた。
さっきまで、淡々と喋ってた割には小学生パートに入って人間ぽい喋り方になったと思わない??
あれ、以外にそうでもなかった?
まぁ、なんて言うんだろう。小学生の記憶ってあんまりないんだよね。
正確に言えば、何年生の記憶があっても何年生の記憶が...みたいな感じ。
だから、ほんとだったら小一から小六まで語ろうと思ったんだけど全く持って覚えてないから一番覚えてる小三の話でもしようかな。
いや、やっぱ辞めた。
そんな気力ないわ、期待させてごめんね。
あーあ、頭の中がうるさい。騒音しかしてない。
こんな夢見たことないや。
まぁ、いいや。
まだ、時間あるよね。
今度はどんな話をしようか。
現実の話をしようか。
今、目の前はうっすら景色が見えてる感じで身体はギリギリ指が動かせるかな。あと、冷たい感触と生ぬるい感じがある。
多分、雨降ってると思う。
今、8月か9月だったはず。
思い出せないや、ま、いっか。
救急車?は多分来てると思う。
首動かせないから分からないけど、ってそもそも私身体動かせないじゃん。そんな大事な事すら忘れてたなんて私もボケたなぁ。
まだ、若いはずなのに。先が思いやられるよ。
あーあ、上手く行けばアイドルになれたのかな。
最終面接まで行ったのに、圧倒的に実力が足りなかったのが目で身体で頭で全部で分かっちゃったんだもん。
あんなに、”歓声"を浴びたかったのに今じゃ悲鳴の荒らしだよ。これも実際”歓声"みたいなもんなのかな。
あぁ、もう時間みたい。ここまで付き合ってくれてありがと。私。
ごめんね、最後の最後までこんな私で。
そうね、最後に一言言い残すならば…
どんなに世界が変わってもずっと"私"の事愛してるよ。
「さようなら」
赤い夕日が1人の少女を刺す。
ナイフの様に鋭利で、車の様に重く。
1人の少女は、もう1人の少女に理想を託すように夢に落ちた。
理想は夢のなかで、現実は空のなかで 三日月静 @hakumukagamiya
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