短編集

@shawn-jkp

網戸と冷房

「こんなんじゃ夏始まらへんってえ、」

自嘲気味に吐き捨てたかと思えば、にしても今年の夏は暑いよなあ。と言った彼は今日も僕の部屋でジャンプを読んでいる。

「勉強の邪魔しにきたんなら帰れよな。」

気を利かせて出した麦茶は、とっくにぬるくなっているだろう。氷が溶けて、かさが増したそれは、あと少しでグラスから溢れそうになっている。

「じゃあこの麦茶飲み終わったら帰るかあ、」

語尾を伸ばすような特徴的な、柔らかい話し方をする彼は、とうとう先週分のジャンプまで読み終えたらしい。


「ぬるい麦茶なんておいしくないだろ、ん。」

薄まった麦茶が、少し残る、結露したグラスに、新しい氷と、冷えた麦茶を、注いでやる。クーラーの風がよくあたるベッドに寝転ぶ彼は、今週号のジャンプを読み進めている。

「ワンピース激アツや、なあ?」

アニメではまだ戦闘パートにも入っていない。勉強しているフリで誤魔化していると、カランッと氷がグラスを叩く音がした。


「お茶、入れよか?」

手渡されたグラスは、汗をかいていなかった。もうすぐ店頭に、最新号のジャンプが並ぶ時間だ。

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