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Z「嫌な予感はよく当たるとは言いますが……」

A「あー、推敲は進んでいないんですね、やはり」

Z「クリスティの特集でいくつかホラーに対する学びがあったんです。『春にして君を離れ』ってホラーだなって思ったんです」

A「確かに怖いですね。〆切迫っているのに推敲を進めていない人は出てきませんが。でも、あれ、ホラーとは違う気がしますけど。お好きなんでしたっけ?」

Z「番組を観て、新しく魅力に気づいたというか、ホラーってこういうことかって飲み込めた気がします」

A「この数ヶ月、ホラーってこういうことかと膝を打つばっかりですね。ちっちゃい子が世界を発見していくことみたいでいいですね。新鮮な驚きの連続。で、あれのどのへんにホラーを? 私のおかげで家族は幸せだわと思っていた女が砂漠で一人になって……(以下、少し内容に触れるのでカット)」

Z「元々、怖いお話だとは認識していたんですけれどね。真実がわからないから怖いんじゃなくて、真実がわかっていくと怖さが増していく。というか真実がわからなかった自分(語り手)が一番怖いというつくりがね、これこそホラーなのではないかと」

A「原稿を放り出してテレビ見ているような人に丸め込まれそうな自分が怖い。名義はクリスティじゃないんでしたっけ」

Z「メアリ・ウェストマコットです。早川さんのクリスティ文庫ではクリスティ名義になってしまったのかな」

A「ミステリではなく一般小説の形ですが“あのときのあれはどういう意味だったのか”というクリスティお得意の設定なんですよね、一応は」

Z「旅先の話でもありますしね。ジャンルとしてはミステリでないのかもしれません。でも、あれを今の日本でミステリ作家として名前が知られている人が書いたら、ミステリとして売られている気がします」

A「家族とか母親の物語ということであれば、『五匹の子豚』にも通じるのかも」

Z「名前が挙がったので触れますけど、『五匹の子豚』に出てくる連中って、ホラー映画に出てきそうなクセのある人物たちばかりな気がします」

A「あんまピンとこないすけど」

Z「芸術家の父親なんて嫌なやつでしょ」

A「前半でモンスターにやられちゃうタイプの嫌なやつってことですか? いや中盤か。前半は嫌な野郎のせいで、狭いコミュニティの居心地が悪くなるのがお決まりといえばお決まり」

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