白の蝶と黒の蝶と人々
仲仁へび(旧:離久)
第1話
あるところに、仲の悪い蝶々がいました。
白と黒の蝶々の二匹です。
白の蝶は綺麗に舞う蝶。
美しい舞をみせる蝶は多くの人から愛されていました。
その舞は人々の気持ちを楽しくさせる、魔法の舞です。
そして、色が違う黒の蝶。
その蝶も綺麗に舞う蝶です。
けれど、その世界で黒は不吉を呼ぶ色だとされていたので、人々は遠ざけていました。
その舞が人々の気持ちを悲しくさせる、呪いの舞という点もあったからでしょう。
二つの蝶は魔法をかけようとも、呪いをかけようとも思っていません。
ただ舞を舞いたいから、舞っているにすぎないのです。
だから変わらない舞なのに、人々にちやほやされる白の蝶の事が黒の蝶は嫌いです。
黒の蝶は白の蝶に嫉妬していました。
そのため、ある日我慢の限界を迎えた黒の蝶は、白の蝶をだまして、美味しい蜜のある場所を教えました。
すると、その場所をおとずれた白の蝶は、おそろしい動物におそわれて死んでしまいました。
多くの人が悲しみましたが、黒の蝶は満足します。
そのあと、綺麗な舞を見せる蝶がいなくなった事で、人々は蝶というものに対する関心をうしないました。
それと同時に、黒の蝶を見てくれる人も誰もいなくなりました。
しかし、黒の蝶はそれでかまいませんでした。
上を見上げるから辛いのだと、黒の蝶は考えます。
だから上がなければ辛くない。
それから黒の蝶は心穏やかに日々を過ごし続けました。
黒の蝶だけが穏やかな気持ちで。
白の蝶と黒の蝶と人々 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032
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