第二十八話
Oさんが小学生の頃の話。
新年改めて親戚一同が集まるなか、曾祖父から子供らにお年玉が配られた。
おせちも食べ終わり、つかの間の自由時間が訪れるや否や、Oさんは宛がわれた寝室に戻り、若干の厚みをもち「お年賀」と書かれている封筒を覗きこんだ。
白熱灯の明かりのもと、スッと滑りでた紙面をみたOさんは思わず声を漏らした。すかさず中身を両手で広げると、皺ひとつなく、黄金色に輝く三枚のお札が露になった。
その右端に書かれた『0』の数に思わず笑みが溢れたOさんだったが、突如として違和感に襲われた。
四つ並ぶ『0』のとなり、そこに佇んでいるのは、丸眼鏡をかけたちょび髭のおじさん、つまりは新渡戸稲造だった。
とたん、高貴な黄金色と黒で描かれた三人のちょび髭おじさんの黒目がくっとOさんを捉えると、にやぁ・・・っと厭らしい笑みを浮かべる。そしてそのまま線香の煙のように薄くなっていき、三枚の紙切れは手のひらのなかで霧散してしまった。
目の前の出来事にショックを受けたOさんは、そのまま部屋を飛び出して両親に訴えたが、「正月早々、馬鹿なことをいうんじゃない」とあしらわれてしまった。
結局、その年にOさんが手にしたお年玉の額は0円であったという。
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