第二十二話

「よくお風呂場で髪を洗っていると後ろから視線を感じる・・・なんて話がありますよね」


 昼間のファミレス。

 明るい店内と比べて、どこか暗い感じのするSさん。彼女がそんな風に話し始めた体験。


 先の例に漏れず、Sさんがお風呂場で体を洗っていたときのこと。妙な違和感があった。


 沸き上がる奇妙な感覚を掻き消すかのように、両手で身体中をまさぐる。


 すると、一ヶ所だけ肌触りの違うところがあった。




「どこだったと思います?」



 抑揚はないが、どこかいたずらっぽく尋ねてくるSさん。

 しかし、なんだか大勢の人がいる空間で口にするのが憚られた。


 すると彼女は目を細めて囁くように教えてくれた。




「背中だったんです」



「背中に、背骨が二本。浮き出ていたんです」




「じゃあ、いま私の頭の後ろにはナニがいますか?」



 予想外の展開に言葉を失い、自分は彼女から目を離せなくなった。





 数秒の沈黙の後に


「あなたは見えないんですね・・・」


 Sさんは目をそらすと、そのまま席を後にしていった。その顔は、心なしか話始めた当初よりも黒くなっていたような気がした。


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