第九話

 Uさんが喫茶店でくつろいでいたとき。




 近くの席から「ビジネスモデルとして・・・」「実利は・・・」などと怪しい言葉が聞こえてきた。


 興味本位でUさんは手元の本からそちらに視線を向ける。




 そこには三人組の男女がいた。




 おそらく〝カモ〟にされている冴えない顔をした四十代ほどの男性。




 立派なビジネスパンツと革靴を履いた、怪しい言葉を口にする男。




 その男のうえに裸でまたがっている黒髪の女。




 異質な光景に、Uさんは思わず二度見した。


 まるで昼間の喫茶店で男と女が事を始めているような、二人の頭がそのまま結合しているような、現実的ではない体勢のものがある。


 そのやけに白い肌の女の、後頭部、髪、肩、背中、臀部、足が艶めかしい曲線をかたどっているのだが、誰もその姿を気にかけない。いや、自分にしか見えていないようだった。




 次に、女の両腕はどうなっているのか気になった。


 よくみると、女の両肩はわなわなと震えており、盛り上がっていた。


 途端に(これ、男の首絞めてるじゃん・・・)と察した。




 それからUさんは、飲みかけのコーヒーと、絶対に碌な目にならない・・・・・・・・三人組を放置して、店をあとにしたという。




 奇譚-女-


 各話原題『泣く洗濯機』、『髪すくい』、『地獄絵図』

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