第28話 ライフプラン
【sideハンズ・バン】
我が名はハンズ・バン。王都に存在する冒険者ギルドの一つでギルドマスターをしている。
この度、我がギルドマスターを務める冒険者ギルドが、王都冒険者ギルド協会に認められてA級に昇格されることが決まった。
それもこれも一年間、我が貴族の方々から求められる仕事を達成してきたことに他ならない。
一年前に元ギルドマスターがこの世を去り、我が引き継いだときはつまらない冒険者ギルドでしかなかった。
冒険者ギルドとしては規模が小さく。新人教育に力を入れている?バカなのかと言いたい。
冒険者は難易度の高いミッションを達成してこそ意味があるのだ。
そのためには新人など後回し。
必要なのは腕があり、高ランクの冒険者たちだけだ。
高ランクの冒険者が討伐してきたモンスターは貴族たちに高値で売ることが出来る。
そうすれば自ずと実績が上がり、冒険者ギルドとしての価値は上がっていくのだ。
「オジサン、着てやったぜ」
ギルドマスター室に横柄な態度で現れたのはB級冒険者であり、甥のオーボだ。
こいつが所属する冒険者パーティーパンサースナッチは素行こそ悪いが、成績はそこそこいいので、私が指導してやればすぐに高ランクに上がれるだろう。
「私の言った通り中級ダンジョン攻略をやっているのか?」
「へいへい。オジサンには感謝してるよ。前のギルドで問題を起こした俺らを受け入れてくれて、仕事まで回してくれるんだからな」
「ふん。人と物は使いようだ。貴様は実力はあるのだ。使い方さえ間違えなければ、我の血を引いている以上優秀なのだ」
「まぁそうだな。俺様は優秀だ。ただ、オジサン、この前少し失敗しち待ってよ」
オーボは詰めが甘い。
徹底的にやり切らなければならないものを、手を抜く癖がある。
「今度は何をしたんだ?」
威圧を込めて睨みつける。
「それがよ。新人の女子二人をちょっと指導してやろうと思ってダンジョンに連れていったのよ。そしたらモンスターパニックに会っちまって、そいつらを囮にしちまった」
悪びれた様子もなく失敗を報告するオーボ。
こいつは冒険者を使い捨ての駒とかしか思っていない。
それを間違っているとは思わんが、一回で捨ててしまってはもったいない。
使い潰して、使い物にならなくなってから捨てなければ、こいつもいつか使い潰した際には…
「ちゃんと死亡は確認したのか?他の冒険者に知れれば厄介なことになるぞ」
「あの状況だぜ?死んでるに決まってるだろ。新人が二人でモンスターパニックを生き残れるはずがない。実際、あれから冒険者ギルドには来てないみたいだしな」
オーボは詰めが甘い男だ。
信用できるはずがない。
「わかった。こちらで処理できるのか調べておく。それ以外に問題はないか?」
「ねぇよ」
「そうか、ならば貴様をここに呼んだ理由だが、グレートモンキーの討伐に行ってこい」
「グレートモンキー?また面倒な相手じゃねぇか。ズル賢くて戦えば強い」
「うむ。グレートモンキーで作る毛皮は防具としても価値があるが、貴族様たちの間では毛皮のコートとして愛用されている。最近需要が増えていてな」
オーボは深々とソファーにもたれる。
「面倒な仕事だ。報酬は弾んでくれるんだろ?」
「もちろんだ。成功報酬だけでなく、支度金を出してやろう」
「へへ、気前がいいね」
「それだけ重要な仕事ということだ。抜かるなよ」
「わかってるって、モンスター討伐は得意なんだ」
オーボは軽く口を言って部屋を出た。
我は、次の客を迎え入れる。ギルドマスターとは忙しいのだ。
「失礼します」
「うむ。ダンカンか……ここには来るなと言ったはずだが?」
「申し訳ありません。使ってたガキが行方不明になりまして、使える奴はいませんかね?」
「お前にスラムを仕切らせて大丈夫なのか不安になることばではあるな……まぁいい。使えない新人をお前にまわしてやる。その代わりに調べてほしいことがある」
「へい。何でしょうか?」
我は、先ほどオーボが話した二人の新人冒険者捜索をスラムの顔を役をやらせているダンカンに依頼した。
「なるほど。その新人冒険者二人が生きているのか調べるんですね?」
「そうだ。冒険者ギルド内の物では問題が起きるかもしれんからな」
「承知しました。それでお代?」
「これを持っていけ」
私は銀貨の詰まった財布を投げ渡した。
「へへ、ありがとうございます。報告はいつまでになさいますか?」
「三日以内に頼む」
「承知しました」
ダンカンは財布を受け取ると部屋を出る。
「我はギルドマスターで終わる男ではない。いつかは貴族になり国の中枢へ進出するのだ。そのためには使える物はなんでも使ってやろう」
入ってきたギャル風の受付嬢を自らの膝へと誘う。
「パパ、私これ買ってほしい」
「おうおう買ってやろう買ってやろう。可愛い奴め、夜は激しくするからな」
「もう~パパのエッチ」
若い女を侍らせ、使える冒険者たちを使ってのし上がる。
これこそが我のライフプランだ。
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あとがき
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