第27話 オークジェネラル
身の丈2間、人を遙かに超える大きなオークは身長だけでなく横にも大きく。
小さな山が、豚の顔を持ち人の身体をして武器を持ち害を成す。
それこそがモンスターであり、人が倒さなければならない獣害である。
「マジかよ。あんなにデケェーの?」
「何っ?ビビったの?」
「ビビってねぇよ!ただ、俺が一人で倒すってなるとスゲー時間かかるだろうなって、面倒に思っただけだ」
ガロは強がるような、それでいてうんざりするような顔を茶化してきたリリアに返答する。
「まぁそうね。あれだけ大きいと体力も多いでしょうし。面倒ではあるわね」
二人の武器は短剣と、レイピア。
どうしても大きな体をしているオークを相手にはダメージ量に不安を抱える武器である。
例えば、短剣に毒を塗って相手を内側から倒す方法や、レイピアでも破壊力の大きなスキルを習得していれば違った戦い方を出来るかもしれない。
しかし、ガロの短剣に毒は塗られておらず、リリアは連携技を多くもっていても、一撃必殺と言った技はもたない。
「今回は僕が止めを刺すよ」
二人に代わって苦笑いを浮かべながらディーが二人を慰める。
ここに来るまでのオークをほとんど一人で倒してきたのはディーであった。
ファイアーアローだけでなく、単純な矢でオークの両目を撃ち抜きリリアやガロに取止めを頼むという展開も多くみられた。
そのため、ディーとオークの相性は悪くないと少しだけ自信を持つことができた。
「お願いします。ディーさんは私が守ります」
剛力を持っていると言っても、オークとの力比べはセシルにとっても分が悪い。
普通のオークならば、力負けすることはないが、ジェネラルがどれほどの脅力を備えているのかわからない。
「ああ。そのときは頼むよ。それじゃあ始めようか」
最初の一発目。相手が油断している間にダメージを与えたい。
ディーは自分が放てる最上級魔法を唱え始める。
「魔素よ力をかしてくれ。ファイアーバード」
巨大な火の鳥がオークジェネラルを飲み込むように放たれる。
「今よ!」
ディー魔法が放たれると同時にリリアが合図を出す。
オークジェネラルを守るように周囲を固めていたオークを背後から吸収する。
火の鳥に驚いていたオークたちは、二人の奇襲に気付くことなく。
一体は首を突かれ、もう一体は心臓を一突きされる。
「ブウォオオオオ!!!!」
雄たけびを上げるオークジェネラルが火の鳥を抱きしめて、火傷を負いながらも炎を消してしまう。
「ガアァァァァッァァ!」
さらに雄たけびを上げて、敵襲を知らせる。
ガロとリリアに気付いたオークたちが二人に反撃を仕掛けようとするが、そこへ炎の矢が降り注ぐ。
「ウガアアアアア!!!!」
ディーの存在を探してオークジェネラルが首を巡らせる。
降り注い炎の矢からディーの位置を特定したオークジェネラルが跳び上がる。
「空中は的だよ」
オークたちに降り注いでいた炎の矢が、オークジェネラル一体に集中して放たれる。
魔力が尽きたとしても攻撃を当て続ける。
「セシル!」
炎の矢を打ち切ったディーがセシルに声をかける。
全身を焼かれ、貫かれ、傷だらけになったオークジェネラルが二人の前に降り立つ。
「ウゴオオオオオ!!!」
片目は潰れ、片腕は上がらないほどの傷を負ってもオークジェネラルは闘争本能を失うことなく向かってきた。
「ハァアアアアアア!!!!」
セシルが気合一閃、大楯でオークジェネラルの大きな体にバニッシュを仕掛ける。
オークジェネラルの突進力と、セシルのカウンターは絶妙なタイミングで相手を弾き返す。
「よくやった」
「ええ。そうね」
戻ってきた二人。
ガロがオークジェネラルの背中を駆けあがり、コメカミに短剣を突き刺す。
リリアが走ってきた突進力を活かして、オークジェネラルのの背中へ無数の穴を作り出す。
「ゴフッ」
巨大なオークジェネラルが口から血を吐き出して倒れる。
四人が上手く連携して戦いに臨み大金星を挙げた。
「よし!でも、冒険が終わったわけじゃない。気を抜かずに行こう!」
ディーはガッツポーズをしながらも、自らの気持ちを引き締めるように声をかける。
「ハァー、私達が本当にやったのね」
「へへ、マジかよ。俺が」
「やりましたね」
ディーの声は聞こえているが、三人からすれば信じられない出来事だった。
リリアは、多少戦闘は出来ていたが、初級をなんとか攻略程度。
セシルは、防御だけで戦うことすらできなかった。
ガロに至っては、スラムのスリとして、自分がオークを倒せる日が来るなど考えてもいなかった。
それが経った三週間。
教えられただけで四人はそれぞれでは絶対に倒せないと思っていたオークジェネラルを倒せるだけの力を付けることができたのだ。
パンパン
「さぁみんな。まずは安全の確保だ」
ディーが手を叩くと、三人はおかしそうに笑いだす。
「ディーの兄貴。先生の真似か?」
「口調がちょっと似てたわね」
「なんだか、落ち着きますね」
三人の態度でディーも笑みを浮かべる。
「これが一番聞くだろ?」
「確かに」
「そうね」
「はい」
四人は今回の戦いで絆を深めることに成功した。
俺は最後まで見ているのは無粋だと判断して、彼らが安全を確保したところで街へと戻った。
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