冒険者の家庭教師

イコ

第1話 落ちこぼれの講師

ここはエラーソ王国王都にある冒険者ギルド。

王都には様々な冒険者ギルドが存在していて、最近は切磋琢磨を続けている。

そんな冒険者ギルド、ハンズバンのギルドマスター室で一人の職員のクビが言い渡された。



「今日でお前はクビだ!」



ハゲデブ臭い!三拍子揃った冒険者ギルドのギルドマスター、ハンズ・バンから直々にクビを言い渡された。



男の名はマナブ・シドーと言う。

エラーソ王国では珍しい黒髪黒目の普通の人族。

年齢は今年30歳になったばかりで、初心者講習コースの訓練官をしていた。



「待ってください!ハンズ・バンギルドマスター!俺が何をしたって言うですか?俺は冒険者初級コースの講師として仕事をしていたじゃないですか!」



マナブ・シドーが講師を務めるようになり、新人冒険者の生還率は高くなっている。

結果も残しているのにどうしてクビにされなければいけないのか理解できないと抗議をしていた。



「うるさいうるさいうるさいぞ!貴様のような無能は掃いて捨てるほどいるのだ。

何が初級コースの講師をしていただ。

そんなものは誰でも出来る仕事ではないか?我がギルドはAランクギルドとして恥ずかしくないようにランクアップせねばならぬのだ」



ハンズ・バンがギルドマスターになってから、初めてのギルドランク昇格を果たした。

それを機にハンズ・バンは職員の入れ替えを考えた。



事務員は綺麗所や従順な者立ちだけを残し。

講師たちは、高ランク冒険者を雇い入れる。



「ですが!」



「ですがも、かかしもな~い!貴様が出来る仕事など。

所詮は新人のどうでもよい冒険者に冒険者の基礎を教えるだけではないか。

そんなものは冒険者ギルドに務めていれば事務員でも出来るわ。

とにかく今日で貴様は首だ。この落ちこぼれの講師めが出て行け!」



マナブ・シドーは5年務めた冒険者ギルド初級コース講師としての職をこうして失うことになった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ただ、ギルドマスターに誤算があったとすれば、マナブ・シドーは講師をクビにされたからと言って困るタイプではなかった。



「まぁ、仕方ないか前任のギルドマスターが厚意で与えてくれてた仕事だしな。

今のハンズには何を言ってもダメそうだ。それにしても何をしようか?」



5年間、質素倹約に励んだお陰で、ある程度資金を持ち合わせている。

10年程度は働かなくても生活が出来る程度には蓄えもある。



「でも、何もしないってヒマだな」



ヒマつぶしについて考えるが、商売をしようにも市場の価格がわからない。

冒険者ギルド証は持っているが、冒険者になりたいとも思わない。


友人のチェインのように人のために走り回って仕事を取ってきて冒険者支える事務員になる気も無い。


はてさて、何をすれば一番良いのか?



「お前は今日でクビだ」



ふと、冒険者ギルドの入り口でこれからの行く末について考えていると、新人冒険者たちがもめている姿を目にした。



「あれはバッツか?」



新人講習を受けた生徒のことは全て覚えている。

三年前に講習を受けた戦士のバッツがパーティーを組んでEランクに上がった話は同僚から聞いていた。



「あいつも随分と偉そうになったもんだ」



戦士バッツは少々臆病な奴で、デカい図体の割りに口だけの奴だった。

そんなバッツが、魔法使いらしき新人冒険者にクビを言い渡していた。



「ふぇえ~お待ちを!あなた方にクビにされたら僕はいくところが!」



クビにされた新人の顔を知らないので、講習を受けてに来ていない生徒だろう。



「うるせぇ。魔法使いのくせに使える魔法がファイアーアローだけって弱すぎだろ。

しかも三発撃ったら終わりで後は役立たず。

そのファイアーアローですらゴブリンを倒す威力もねぇ。

お前みたいな奴を役立たずっていうんだよ」



戦士バッツの言葉に俺は目を丸くする。

確かにそれはあまりにも弱い。


涙を浮かべて這いつくばるだけの魔法使いは、去って行く戦士バッツを見送るしかできないでいた。



「僕だって僕だって、レベルさえ上がれば!」



一人で悔しそうに地面を殴って愚痴を吐く。



「いや、それは違うだろ?」



「えっ?」



泣き崩れる魔法使いについお節介だとは思うが声をかけてしまう。



「なっなんですか!あなたは?見たところ魔法使いでもないようですし。あなたには関係ないでしょ!」



ああ、そうか。こいつは魔法使いに師事していたから講習に来なかったのか。



「はは、まぁそうだな。でも、お前の考えが根本的に間違ってるのは事実だ」



「僕は僕の師匠の教えに従って魔法を習得したんです。あなたにとやかく言われる筋合いはありません」



魔法使いって奴はプライドだけは高いから厄介だ。

少年も最後のプライドを振り絞って立ち上がり去ろうとする。



「まぁ、お前がいいなら良いけどさ。今のままならお前強くなれねぇぞ」



あ~あ、どうしていつも俺はこういう言い方しか出来ないのかなぇ。

打ちひしがれている若者にさらに追い打ちをかけるとか、俺自身がクビになったから八つ当たりしちまってるのかもな。



「どっどうすればいいっていうんですか!

僕だって師匠に教えてもらってから必死に努力しましたよ。

魔力はイメージだっていうから、ファイヤーアロー以外の魔法も練習しましたけど。

どれも発現すらできないんです。

唯一出来たファイヤーアローですら威力不足で役立たず呼ばわり!

僕だってわかってますよ向いてないって!

でも、僕は魔法使いの冒険者に憧れたんです。魔法使いになりたいんです!」



まだ、登録可能年齢を満たしたばかりであろうガキの熱意は結構胸にクルもんがある。



「くくく、なら坊主。俺の指導を受けるかい?」



「あなたの指導?」



「おうよ。訳があって今は無職でな。金はあるから、お前の指導料は出来高制でかまわんぞ」



俺が立ち上がって手をさしだす。



「本当にあなたに師事すれば強くなれるんですか?」


「それは保証してやる」



「わかりました。魔法使いのディーです。冒険者ランクFで見習い冒険者をしています」



ディーは戸惑いながらも俺の手を取った。



「そうか、俺は冒険者専属の家庭教師のマナブ・シドーだ。いいか、ディー。必ず一ヶ月でお前を一人前の冒険者にしてやる」


「足った一ヶ月で?!」


「おうよ。普通の冒険者が一年で一人前になるところをお前は俺の指導を受けるんだ。一ヶ月もあれば十分に一人前になれるさ。それまで逃げるなよ」



ディーは希望と不安で困惑した顔をしているが、それでも決意に満ちた顔をする。



「よろしくお願いします」


「おう、今日から俺はお前の先生だ。よろしくな」


「はい。マナブ先生」



こうして俺に初めての生徒が出来た。



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あとがき


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