たべもの日記 おさかなのかたち

のこもこ

新潟

 新潟出身の親戚がどこかにいるらしく、我が家はお煎餅がとても好きだ。


 でもこれは、我が家が大好きなしょっぱいお煎餅とはちょっと違うお話…。



 買い物中に母が売場で嬉しそうに声をあげた。

「あらっ!あじろやき!」



 透明の袋に入った小さなおさかなのかたちの米菓。

「お煎餅?」



 私は何となく食べた覚えがある程度だが、母のテンションはかなり高い。


「わぁ!懐かしい。今の今まで『あじろやき』のこと忘れてたわ。これ…ママのおばあちゃんが大好きで、いつも押し入れにたくさん入ってた…。ああ…懐かしい…。このあじろやきと…神田精養軒のマドレーヌとアーモンドと、チョコレートのキャンディが押し入れにいつも入っててね…。どっちかが赤でどっちかが緑の包みでね…。あとは、六花亭のチョコレートと…。なんだか薬局にしか売ってないようなレモンのキャンディが…。他にも何かあったような気がするけど…。なんだったかしら…。確か綺麗な色の缶に入ってた…。おばあちゃん…。あ~お墓参りに行きたくなってきたわ…。」


 ――おおっ。すごいな…。テンション爆上り…。泣いて…、ないよね…?


 母をこんな懐かしい気持ちにさせる『あじろやき』


 やるな…。



 その後『あじろやき』をどっさり買い込んで帰ってきたが、我が家用には二袋。


 あとは親戚に送りまくっていた。



 小魚のかたちのお菓子といえば、日本が誇るアニメ制作会社の『猫』の作品にも出てきて、一時期「無印良品」の豆乳ビスケットが流行ったらしいが、この『あじろやき』という米菓を知っている人は、残念ながら私の周りには多くなかった。


 新潟県柏崎市にあるこのお店。



 ほんのり甘いお煎餅。


 しょっぱいお煎餅を食べたい時には物足りないけれど、かたちも可愛いし、ちょっと軽めの米菓。

 えび粉が使われているらしい。




 小さな頃に、大好きな誰かと一緒に食べて、でもしばらく忘れてて…。



 ある時ふと思い出したり、売ってるのを見つけて嬉しくなったり…。




「物より思い出」ってこういうことを言うのかもな…。


 あんなに大賑わいで買ってきた母が、少し食べて残したままの、少し湿気た『あじろやき』を食べた。


「おいし…。」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

たべもの日記 おさかなのかたち のこもこ @ajisai616

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る