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「あのねミコト。私、来夢の恋を応援したいの。私に協力してくれる?」
まったく思い掛けない願い事を、私はしてしまったらしい。
ミコトは眉間に
「…え?来夢の…恋!?いや、ちょっと待って。それ、マジで言ってる?」
既にミコトも
今までなら友達の恋に気付いても、恋のキューピッドなんて買って出ることはあり得なかった。
ということは、私の中でもはや来夢という存在は、今までの友達よりも特別だということになる。
ここ最近の私は、来夢がきっかけをくれたおかげで自分の未来を案じ、変えてみたいと願える人間になれた。
だから今、実際こうして絶好の”未来改革チャンス”を得ているのだ。
「私的にはかなりマジで、間違いないと思ったんだけど、憧れてるだけなのかなぁ…」
詳しくは知らないが、碧がなんらかの形でMETEORと関係を持っているらしいから、そこに対しての関心からくる好意ってこともあり得ると思うのだが…。
「うーん、憧れ以外の感情かぁ…。で?それが本当として、依はどうしたいの?」
そう言われて気付いたのだが、私はまったく恋のキューピッド案を練ってはいなかった。
今度は私が眉間に
「なんか面白そうだね。今日依も泊まるわけだし、こういうのはどう?」
その案を聞いてみると、仰天するほどのキューピッド案だった。
その為、即却下したかったが、正直魅力的な案でもあった。
来夢のことを思えば、一晩一緒に過ごせる上、親密度が増すこと間違いない魅力的な案だと感じた。よって、
「でもどうして?依はあまり碧のことをよく思ってないよね?」
「うん。でもそれとこれとは別ってやつでね、来夢が好きなら私の感情なんて関係ないじゃない?」
「
確かに碧のことは嫌いだ。会ってもあまり話をすることはないが、
碧は誰に対しても
推し友として私と接するくらいだから、関係がだんだん良くなるに違いないと
今は猛烈な嫌悪しかないけれど、本気でそれとこれとは別だと思っているからおめでたい。
その後、計画は実行された。
「…はぁ?なんでだよ。会って間もない女子と同じ部屋って…。お前と俺が同じ部屋でいいじゃん」
「ごめん。勝手にあみだくじで決めた」
「アホらしい…。なんでそうなるんだよ」
「だって使える部屋が2つしかないからさ、普通に相部屋の相手を決めるのも面白くないじゃん?」
「面白くなくていいから。もう一回考え直せよ。来夢も俺とじゃ嫌だろうし。な?来夢」
碧に問いかけられている来夢だが、私とミコトの企みに気付いているらしく、呆れ顔が少々怖い。
しかし、そんな時であろうと、気を取り直した来夢は愛嬌抜群の専売特許を発揮する。
「ううん。全然嫌じゃないかな〜。アミダで決まったんならつべこべいわずに従う
「あのさ、来夢…。今の言葉のチョイス間違ってるから。同じ部屋で一晩を共に過ごしたとしても、触れることすらできないから。俺は」
愛嬌たっぷりの来夢とは相反し、目を伏せた碧はまるで、”
世間で言うところの、”一夜を共にする”ことは可能だが、敢えて不可能だと装ったのか。それとも、正真正銘の不慣れゆえに、到底不可能だと暴露したのか。
彼の真意は私にはわからない。
なぜなら、私は碧とは付き合いが浅すぎるから。
恋のキューピッドに徹したい私は、きっと言葉を間違えた。
「私はあみだくじに従って、ミコトと一夜を共にするね。だから碧はライムをお願い」
『一夜を共にする』という表現ではなく、碧と同じく『同じ部屋で一晩共に過ごす』にしておけば、ほんの少しでもクリーンな表現だったかもしれないのに…。
そんな後悔などおかまいなしに、碧は私に冷酷な言葉を浴びせる。
「命令するなよ。結局は言われなくてもそうするから。
命令のつもりはなかった私は、すぐさま反論しようとした。
しかし、碧はミコトに”一晩を過ごす部屋の場所”を性急に聞きただし、一目散にその目的地に向かってしまった。そのため私は、反論するタイミングを失ったまま、深いため息をつく。
また碧を怒らせてしまった。どうしてこうも嫌われるのだろう。
出会いから今日までの様子から分析すると、私は碧にとって、生理的に受け付けない人間なのかもしれない。
碧に出会って早々のやりとりを思い出す。
『あんたって……彼氏いる?』
『え、いないよ…?』
『焦らない方がいい。あんたは交際には向いてなさそうだから』
話したことのない初対面の人間に対し、顔つきや生理的な問題で”人となり”を判断したのならば、
この時点で私の方も彼に対し、良い印象があるはずがない。ただ、推し友と割り切り、一方的な良好関係を続ける協調性はあると自負している。
今まで生きてきてわかったことだが、私の第一印象はクールらしい。表情が乏しいからだとはわかっているのだが、仲良くなるとわりとよく喋るし、笑いもする。
なのに碧ときたら、私と仲良くするそぶりは皆無だった。
どうしたらいいものかと考えに
「バカなの?ミコトは。私が碧のことをどんなふうに思っているかを一番よく知ってるのは、ミコトじゃない」
「展開的にあり得なくて、僕たちが考えつかない面白い発想だなって思ったんだ。二人の間に何か起こるなんてありえないでしょ?」
「ばっかじゃない!?」
意外だった。事を
「ヨリリンは今後、こんなことを
「…わかった。余計なことをして、ごめんね」
私にはやんわりと苦言を呈しただけだった。
既に碧がいる部屋に入ろうとしてノブに手をかけたまま、私とミコトの方を振り返る来夢。
「それともう一つ。ヨリリン、私のは恋じゃないからね。ただ訳もわからずに、憧れの念を抱いてるってだけ」
訳もわからずに…憧れる?来夢の言葉の真意がまったくわからない。
「推しへの感情に近いの。だからまあ、こんな機会なんてなかなかないし、今日はもう一人の推しの寝顔を
場の空気を読んでか、機嫌を直してくれた来夢に感謝。
私とミコトも当然何事もなく、ただ深い眠りについた。
だがその後、思いがけない事態に発展する。
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