病
@kakibito
第一話
先日、中学時代の同級生、葉山から急に連絡がきた。
「久しぶりだな。ちょっと相談があるんだけど会ってもらえないか。」
10年も会ってないものだったので、マルチの勧誘でもされるのではないかと会うのを迷っていたが、あいにく学生時代の人たちとは現在誰とも関係がないので会ってみることにした。
「久しぶりだね。」
先に到着していた彼は素っ気なくそう言ってきた。
「久しぶり。もう10年ぶりかな。」
話題に困る。コミュ障の自分にはこんな言葉しか出てこない。
「もうそんなになるのか。最近は誰とも会ってなかったから会えてうれしいよ。」
「カースト上位だった葉山にそんなこと言われるなんて嬉しいよ。」
しまった。皮肉っぽくなり過ぎたか。
「学生時代から佐藤君のことは気になってたんだ。変な意味じゃなくてね。だからやっと話せて嬉しいんだ。」
「何だか照れるな。どうせなら女の子に言ってもらいたかった。それで相談って、、、?」
「そうだ。その話がしたくて君を呼んだんだ。とりあえず二人で話せるところに行こう。」
あまり他の人に話を聞かれたくないらしく、個室の居酒屋に行くことになった。他の人に聞かれたくないような話って何なんだ。
「単刀直入に言う。人を殺した。」
は?
「おい。久しぶりだからって流石にいきなりその冗談は反応できないぞ。」
「違う。冗談なんかじゃない。本当に人を殺したんだ。」
冗談じゃないのはこっちのセリフだ。
「マジなのか?」
「マジだ。」
真剣な眼差し。大量の汗。分かった。これは本当だ。
「マジなんだな。なんで殺したんだ。」
こんな時、普通は慌てるものだと思っていたが、実際はそんなことないらしい。
逆に冷静になってしまう。
「俺も殺したくて殺したんじゃない。」
快楽犯以外のほとんどがそう供述している気がする。
「身近に鬱病の友達がいたんだ。その鬱病がかなり酷くなって、会うたびに殺してくれって頼んでくるようになったんだ。もちろん最初は殺すつもりなんてなかった。」
「じゃあなんで。」
「そいつ、『自分で死ぬ勇気はない。だから殺してくれ。俺を殺してくれるまでこの部屋から絶対に出さない。』なんて言い出すんだ。」
「そりゃあ辛いな。それでやっちゃったのか?」
「ああ。3日間は踏ん張ったんだ。友人だし俺も殺したい訳じゃなかった。
けど段々俺もおかしくなってきて、そいつの用意していた包丁で何回も、何回も刺したんだ。」
「うっっ、、、!」
「悪い!飯食いながらする話じゃなかった!」
当たり前だ。空想ならともかく、実際にやった奴に話を聞くんじゃリアリティが違う。
「いいんだ。それよりお前どうするんだ。自首するしかないだろ。」
「いいや。自首はしたくない。」
「したくないって言ったって、すぐに警察にばれるぞそんなの。」
「そこは大丈夫なはずだ。俺、親がいなくて中学生の妹と二人暮らししてるんだ。
あいつが一人で暮らせるようになるまでは一緒にいたい。
それにあいつが殺人犯の妹だなんて言われるのは絶対に嫌だ。」
「大丈夫ってどういう事だ。」
「殺した奴の手筈で証拠は出ないようになってる。」
「・・・信用できるかはともかく分かった。じゃあこれからどうするんだ。」
「さすがに自分の意志ではないとはいえ人を殺したとなると、こうして誰かに会ってないとおかしくなりそうなんだ。だからしばらくの間俺と一緒にいてほしい。」
は?
本日二度目の『は?』だった。
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