おにいさん

紫月

プロローグ


自分の事は、貞操観念が強い女だと思っていた。




やたらと男女の集まりには顔を出さなかった。

肉体関係は恋人以外とは持たない、なんて当たり前。

「セフレ」を作る意味も分からない、作る人の気持ちが理解できない。

ワンナイトだなんてもってのほか。



これはあくまでも私の基準。

そうじゃない人だっているだろう。

けれど、こういう事を簡単にしてしまう人達を、できてしまう人達を、

私は表には出さないがどこかで軽蔑して生きていた。



ただ、友人の中にも、そのような生活をしている人はいた。

そんな関係を続けている事を良くは思っていなかったが、よく話を聞いていた。




「やめればいいのに、そんな男」




私は単純な言葉しかかけられない。

それでも、皆は涙を流してこう言う。





 "でも、好きだから"






どれだけ考えても、その涙を見ても、私はその意味が分からなかった。






それなのに、

そんな私なのに。





恋人がいながらも、おにいさんと関係を持ってしまったのは、


あの夜に飲んだお酒のせいなのか

理性を失ってしまうほどの一目惚れだったからなのか

それとも、単に私が、自分が思っていたよりもずっと、ずっと

欲望に勝てない、軽い女だったからなのか_____。



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