落ちこぼれ藝大生、異世界で本気出します!

玄太郎

プロローグ





ヴヴヴ…ヴーヴーヴー……ヴヴヴ…ヴーヴーヴー……ヴヴヴ……


遮光カーテンを締め切った6畳間にスマホのバイブレーションが響く。

まずい。そろそろ本当にまずい。

着信が切れたのを確信してから恐る恐るスマホを手に取り、着信履歴の数を見ないようにしながらメールアプリを開く。


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件名:【!重要!】【!緊急!】【見たらすぐに返信すること!】【!至急!】前期の単位について


本文:

瀬尾カヅキ様


版画助手の田中虎之助です。

結論から言いますと、瀬尾さんはこのままだと前期の版画造形実技の単位を取得できません。お分かりのこととは思いますが、進級に関わる必須単位です。


体調についての事情は聞いておりますが、再三の電話、メールにも返事をいただけず、教員一同ほとほと困り果てております。


成績処理の期限が近づいておりますので、【今週中に】指導教授である猫田先生との面談を必ず!受けていただきたいと思います。

これが最後のチャンスです。


つきましてはこのメールを確認次第至急返信をお願いいたします。

明日17:00までに返信いただけない場合、ご実家に連絡いたします。

ご承知おきください。


返信の際、

今週木曜・金曜14:00〜17:00の間で希望日時を明記してください。

面談は30分程度を予定しております。

音信不通の間に制作したものがあれば持参すること。


それではご連絡お待ちしております。



田中虎之助

帝都藝術大学 美術学部絵画学科 版画研究室 教育研究助手


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割れるように痛む頭を抱えながら這うように冷蔵庫を開け、臙脂色の350ml缶の最後の一本を取り出しプルタブを引き上げる。

湿布臭い炭酸をあおるように喉に流し込むと、嘘のように痛みが引いていくのを感じた。




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