第8話 つかの間とーく

 そうしてあのいかにも夏という部屋から帰ってきた彼らは情報を共有することにしたのだが、その前に一旦休憩をはさむことにした。いや、挟むようにと無言の圧力を彼女からかけられたので、その圧力に屈したのだが。


 彼女が服をエネと一緒にイチャイチャしながら乾しているというイベントが発生したその一方で、残された二人は何やら話し込んでいたのであった。


 その会話の始まりは紫月の方からであった。


「あんたって意外に動ける体してんだな。」

「えっ、そうかなぁ。普通な方だと思うんだけど。」

「こっちだとあんなに動けるなんて都会にはあんまいないぞ。」

「えぇ!そうなの?知らなかった...そうなんだ...」

「で、あんたはなんで潜血市こっちにきたんだ?なんか理由とかきっかけでもあたりするのか?」

「いや、その、新しい自分になりたくて...」

「...そ。ま、いいんじゃない?」

「変なこと聞くかもしれないんですけど、僕ってどうですか?」

「どうって?」


 そこでクリムゾンは深刻そうな顔で彼に聞く。


「僕ってその個性出てますか?こっちに馴染めているでしょうか?」


彼から出てきた予想の斜め上を行く質問に思わず顔をそむけてしまう。こちらの答えを待っているであろう彼のためにも笑いを堪え、返事を返す。


「...そのままでいいんじゃないか。もう十分だと思うが。」


 その回答を得た彼はまるで水を得た魚のように生き生きとしていた。笑いを堪えている紫月には気づかないのであった。



 その頃のイベント中の彼女らはというと、こっちもこっちで恋愛相談?が行われていたのであった。


「エネちゃんってさ、何歳なの?結構見た目とのギャップがあると思うんだけど。」


「えぇ、そこ聞いちゃう?うーんと、物質的な年齢の話?それとも人格的な話?なんて言ったらいいかな、今、ここにいる私は私ではあるが私ではないともいえる存在であるが、局所的に見たら私の一部でもあるともいえる。本当の私はこの世に存在しないかもしれないし、この世界のどこにも存在するかもしれない。もしかしたら宇宙人だったり幽霊だったり未来人であるかもしれないね。今の私の外見的なところに触れるとするのならば今の見た目は借り物の姿なの。本当の私はそれはそれはもうもっと身長が高くて髪が短くてすらっとした身体でかっこいいんだよ!本当だよ!まあ、今は分け合って此処に居るんだけどね...」


「ふーん、なんか難しい話してるね。まあいいや。エネちゃんはエネちゃんだもん。今のままでも十分にかわいいよ♪」

「そこまで言われると照れちゃうな。よーし、こんなもんで乾いたんじゃない?」

「あっ、本当だーありがとねー手伝ってくれて!エネちゃんはこの世で私のつぎにかわいいよーっと。さて、さっさと情報共有でもしましょう。おーい。」


 そうして彼らは今まで出てきた情報を整理し始めるのであった。



次回へ続く

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