鮮血の矛
縁側
序章
「────!」
人々の怒号、耳に聞こえる救急車のサイレン音、ひどく不快感を感じる雨粒、体に付着した肉親であった者の破片。
「………なに」
全てが、五感に響くすべてが煩わしく思えた。
否定する────何ともまぁ簡単なことだ。ただ目の前のことに対して現実逃避すればいい、ほんの数十分前にしていた日常に意識を記憶を向けて、この現場から、風景から逃げ出せばいい。とても簡単なことだ。
「さ────ま!」
何かが体を揺らしている、それと声も聞こえる。ノイズが記憶のかけらがそれらを遮ろうとする。
「っ!」
その瞬間、顔を平手で叩かれた。
「あ、あぁぁ」
唐突な痛みに意識が向けられ、逃避していた現実が暗くよどんでいた瞳に映った。
本来の色を失ったアスファルトに広がる
「ごめん、すまない……」
「ばぁ」
「っ、ごめんね」
何で祖母は泣いているのか、何に対して謝罪しているか分からなかった。一つだけわかるのは────。
────自分は今日、両親を失ったという事実のみであった。
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