あんたのセイ

丹月

第1話

私は今道を歩いている。しかし、どうも様子がおかしい。空は黄緑色になり、木々も普段見るものとは段違いに大きくなり、葉っぱの大きさも人間二人を葉っぱでくるんでもまだ余裕があるくらいに大きい。ここは一体なんなんだ...あ。あそこに人がいる。おかしい人では無さそうだが、なぜ木と木の間の少ししかない隙間で腹筋をしているのだろうか?よし、気づかれないように音をならさずに行こう。

 ポキッ

小枝を踏んで音がなった。

 すると、先程まで腹筋をしていた男は腹筋を止めて私に近づいてきた。そして男はこう言った。

「よう。俺は卯月洋介だ。お前はこの世界に迷いこんだのか?」

 どうやら変な人ではないみたいだ。よかった。

「うん。」

 と、答えた。すると、

「ここはソウストンだ。聞いたことがあるかもしれないが、ここでは一人一人に小さい監視カメラがついている。ほら、お前の横にも小さいカメラが浮いてるだろ?それが監視カメラだ。ちなみにそのカメラは話すこともできるし自我も持っている。そのカメラの役目は、お前が法律を破っていないかどうか見張るためのものだ。ここの法律はとても厳しいからな。この前だって、道端にゴミを捨てるだけで不合格になった人がいたなぁ。まぁ、不合格になっても警察とかには連れていかれない。まず、この世界には警察署というものが1つしかない。そこに行くのは大抵の場合人を殺してしまった人が監視カメラに連れられて来る。」

「なら、その不合格になると何がどうなるの?」

「そうだな...俺もここ14年考えているのだが、ぼんやりとしか分かっていないんだよな...詳しくわかるのはここに来て30年が経ってからだろう。とりあえず、分かりやすいのは、職業のことだ。不合格になると公務員にしかなることは出来ない。もちろん合格者で公務員になる人もいる。合格者と不合格者の二人の教師がいたとしよう。合格者の教師は校長先生とか学校の中でも比較的地位が高い人になりやすいのだが、不合格者の教師は高い地位につくことは難しいっていうところで差がでてしまうな。」

「なるほど...その不合格者にはならない方がよさそうな感じがするわね。」

「そうだな.....だが、この世界の約8割は不合格者だ。」

「そんなに多いの!?」

 すごい場所に来てしまったようだ。

「貴方は不合格になったの?」

「いいや、俺はまだ合格者だ。これからどんなことが起こるかわからねぇからずっと合格者のまんまいれるとは思ってないんだがな(笑)ここに来て14年とは言ったが、俺はもう17なんだよな(笑)」

「どうやってここに来たの?」

「それは、3歳の時、家の近くに山があってさ、その山の探索しようと思って山の中をずっとフラフラ歩いていたら気づいたらこの世界に来てたんだよな...」

 それを聞いたとき、まさか私と同じ境遇の人だとは思わなかった。

 私も家の近くに山があってその山を探索して迷子になって迷っていたらここに来たんだもの。私は卯月にこう言った。

「なんか私たち似てるね。」

「そうかあ?性別とか身長とか結構差があると思うのだが...しかもお前の名前まだ俺知らないから名前が似てるとかは分からねぇぞ?(笑)」

「....卯よ。」

「え?」

「私の名前は水無月 卯よ。」

「あ。俺と一緒の漢字入ってるんだな(笑)しかも卯って漢字が一緒って...なんか良いな。」

「そうなの?」

「うん。」

「小動物みたいって言われるときが多くてあんまり好きじゃないのよ。臆病者って言われてるみたいでなんか嫌なのよ。」

「自信を持っていいと思うぞ?かわいい名前だと思うし...覚えやすい名前だし!!」

 そのときゴォッと音がなったと同時に地面が割れ始めた。

「なんで揺れてるのよ。」

「俺が始めてきたときもこうなったから大丈夫だ。安心しろ。この揺れは新入りが来た時に揺れるんだ。」

「本当によくわからない世界ね。」

「まぁ、いつか慣れるさ」

「そうだといいけど。」

「まぁ。とりあえず、お前はあそこに行った方がいいな。」

「あそこってどこ?」

「役所だ。」

「なんで?」

「お前、住むところないだろ?」

「うん。」

「だとすれば生活していくための場所がないだろ?」

「うん。」

「俺の家にも来たくないだろ?」

「うん!」

「なんでそこが一番元気なんだ....少しショックだが、見ず知らずのやつの家に泊まる方がおかしいか。と、とりあえず、なぜ役所に行くのかというと家をもらうためだ。家賃は払わなくても大丈夫だから安心しろ。」

「なんで払わなくていいの?」

「合格者だからだ。不合格者になると家賃を払わないといけなくなる。」

「謎が多いわね...そういえば学校ってどうしたらいいのかしら?」

「役所に行ったら大概のことは聞いたら全部分かるから行ってみたらどうだ?場所なら俺が案内してやるよ。」

「ありがとう。」

「おう。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「そういやお前何歳くらいなんだ?」

「う~ん...逆に何歳くらいに見えるの?」

「女性にそんなこと言えるわけないだろwけど、強いて言うなら13くらいか?」

「!?当たってるよwなんでわかったの?」

「勘だ.......って話していたらすぐそこに見えてきたなw」

「あれ?」

 私が目を向けると卯月が役所だと言っているのであろう大きくて綺麗な建物があった。その建物には庭もついており、その庭には花壇があり、色とりどりの花が植えられている。どれも自分の家の周りにあった花とは全然違うのでつい立ち止まって見ていた。先に進んでいた卯月もそれに気づいたのか私の方に戻ってきてくれた。そして、

「花好きなのか?」

 と卯月が言った。

 「好きだよ。」

 と私が答えると卯月は

「ここでまってろ。」

 と言ってどこかに行ってしまった。

 卯月が帰ってくるまで花を見ておこうと思い、自分から一番近いところにある花を見ていた。すると、あることに気づいた。それは、花びらのことに関することだ。今私は二つの花を見ているのだが、葉っぱの形はどちらもヒョウタンのような形をしているのだが、花びらの形の方は片方はパンケーキのようなものが形なのだが、もう片方は犬のような形なのだ。色も違うのだが、花びらの形が違う方が私にとってはよっぽど珍しいと思う。同じ種類の花だとしても、色が違うっていうだけでこんなにも変わるのだろうか?私が卯月に聞いてみようと思っていたら右手に水色の花、左手にピンク色の花を(ほんとに花かどうか怪しいけど.....)持った卯月が帰ってきた。

「お待たせ~卯!俺がいない間何も起こらなかったか?怪我とか大丈夫か?」

「大丈夫だよ。心配ありがと。」

「ならよかった。」

「ねぇ、その花はなんなの?」

「これはな、卯に見せようと思って家から持ってきたんだ。」

「家、近いの?」

「そうだな...ここからだと10分くらいで着くなw」

「...みたい」

「え?」

「私も卯月の家に行ってみたいな。ダメかな?」

「別にいいけどなにをするんだ?」

「なにもしないよ。」

「え?」

「ただ合格者だとどんな家に住むのか知りたいの。」

「なるほど。ま、俺は全然いいよ。」

「ありがとう。」


「不合格者になるともう合格者には戻れないって結構大変そうね....」

「不合格者になっても合格者に戻れるよ。」

「え?」

「俺も一回不合格者になったんやけど合格者に戻ることが出来たし。」

「どうやったら不合格者から合格者になれるの?」

「それはな、信頼だ。」

「え?」

「不合格になった人を簡単に言うと監視カメラからの信頼を失ったやつだ。信頼をとりもどすためには、沢山いいことをしなければならない。って言ってる間に家に着いたな。」

「え?ここなの!?」

「そうだけど、どうした?」

「な、なんでもないわよ。」

「ならいいけど。この後役所にも行くからなるべく早く終わらせてくれよ。とりあえず、俺はこの花を置いてくる。」

「わかったわ。行ってらっしゃい。」

「おう。」

 え。ほんとにここに入っていっちゃった。ほんとにここが卯月の家なの?卯月は一人で住んでいると思ってたんだけど、こんなに大きかったら六人でも広々と住めそうだわ。合格者だから少しは大きいと思ってたんだけどこんなに大きくて立派だとは思ってもいなかったわ。だってまるで貴族のような家なんだもの。お城程大きくはないけど、豪邸ではあるわね。もしかして卯月って本当に貴族だったりするのかしら?けど、仮に卯月が貴族だとしたら、木と木の間で腹筋をするのはどうかと思うわ。って言ってる間に卯月が帰ってきたわ。

「おかえり。」

「ただいま。」

「役所に連れていってちょうだい。」

「了解。」

 その後、卯月がいろいろと手続きをしてくれた。学校はというと一つしかなくてそこに行くしかないという。私の泊まるところはその学校の寮に決まった。新しい学校生活頑張ろうかな。

 






 この時の私は今後にあんなことになるとは思っていなかった......

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あんたのセイ 丹月 @akatuki_kiyo_86

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