第6話 とりあえず生活環境を覚えよう
廃スキル 『土属性 中』を持った異世界からの召喚者龍太です。
達彦君の教育係のベンズさんが一生懸命に土属性スキルについて説明してくれたんだけど、俺の気持ちは時間と共に沈んでいくだけだった。
達彦君は俺の顔色を見てそっとベンズさんに説明を止めさせてくれる。
さすがは日本人。機微は読めるよね。
「...さてどうしたものか...」
ベンズさんはお怒りモードのカルロスさんに羽交い絞めされているし、そのカルロスさんも目には涙を溜めている。
達彦君は再びの土下座モードへと移行。
スキルが使い物にならないことはよく分かった。この世界の人達から見て俺は哀れな人なんだろう。
でもよく考えて欲しい。地球には魔素がほとんどない。
つまり地球では、ほとんどの人間がスキルを持たずに生活していて、スキルが顕在した人達は異端者として見られるから必死に隠して生きているのが実情だ。
ということは、魔王がどうのとか、考えなければスキルが無くったって生活は出来るはずだろ。
そりゃ、仕事の選択範囲は狭まるかもしれないけど、そこはそれ、日本で培った先端知識でカバーすりゃ何とかなるんじゃないかな。
安易な考えかもしれないけど、どっちみち向こうでは借金から始まるどん底生活がほぼ決定していたんだから、マイナス分が消えただけでも良しとしよう。
「まあ何とかなるでしょ。それよりもこれからこの世界で生きていくための知識を教えて欲しいな。」
前向きに考えることで言葉の調子も明るくなったようで、達彦君とベンズさんの顔に少しだけ笑顔が戻る。
カルロスさんは....多分あの号泣はうれし泣きなんだろうな。
ベンズさんが達彦君に使ったのであろう教材を持ってきてくれた。
召喚された時点で自動的に付与されるのか分からないけど、こちらの言葉と文字は理解できた。
テキストには、通貨単位、暦や気候、周辺国を含めた地理と歴史、そして魔王と秘密結社についてが纏められている。
「まあ、アメリカみたいなもんですよ。1グルが日本円で大体100円ちょっとくらいで覚えておけば問題ないですね。
物価はこの街を東京と考えて下さい。王都はニューヨークくらいですかね。
物価は地方に行くほど安くなるそうで、村に行くと物々交換のところも多いそうですよ。」
一通りの授業を終えて、街に繰り出した俺達一行は達彦君から、あちらの世界との金銭感覚の違いを教えてくれた。
ニューヨークのことはよく知らんが、地方から東京の大学に通っていたから、達彦君の説明はとてもよく理解できた。
メイン通りを歩きながら商店や工房を見て歩く。
「それぞれのスキル適正に合わせた仕事に着くのが一般的なんで…ブブブ!」
賑わう街の雰囲気に気持ちを持ち直したのか、ベンズさんが明るく話し掛けて来たところで、すかさず達彦君が口を抑え、カルロスさんが羽交い締めにしたのだった。
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