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「青木、随分疲れているみたいだな。普段糸の切れたたこの様にフラフラしてるから良い勉強になっただろう」

 ちぇっ、他人事だと思って言いたい放題だ。

「月島、お前こそ新米親父おやじの初心者マークは取れたのかよ」

「お陰さまで浩木とは上手くやってるよ。赤月には足を向けて寝られないな」

 月島と浩木は実の親子だ。だが、最近まで自分に息子が居ることを知らなかった。

 母親である遊木ゆきが1人で産んで育てていたからだ。それを赤月が遊木の心を読んで教えたというわけで。奴の能力はホントに凄いと思うよ。

 ただ、周りの人間に心を砕いてるが本人はどうなんだろうと思う。

 依頼料も裕福な所からは遠慮なくぶん取るが、貧乏人からは儲けが無く必要経費ぐらいしか貰ってないと聞いた。

「どうした?」

 よっぽど消耗してるように見えるのか、心配そうに月島が覗き込む。

「いや、また酒でも呑みに行こうぜ。可愛い婦警でも紹介してくれよ」

「紹介しても良いけど青木、本当に結婚する気あるのか? 独身をつらぬくと言ってたじゃないか」

 ああ、面倒だったからそう言ってた時期もあったな。でもな、月島達を見てたら家族を持つのも悪くないなと思ったんだよ。

 それに、俺の本当の願いは叶うことは絶対にないんだから。

「お父さん〜」

 浩木と真哉がスッカリ仲良しになって帰って来た。まぁ、今だけ父親の真似事をしてみるのも悪くないなと思った。



 ◇◇◇



「へぇ? 瞬介が父親ごっこをねぇ?」

 夕飯は、どうしても昼間見た、さばの味噌煮が忘れられず月島達を誘って『まどろみ』までやって来た。

「年長者を差し置いて先に父親を経験して悪いな啓介兄」

 さばの味噌煮をアテに一杯呑もうかと2人で乾杯したところで、カランとした音とともに赤月が顔を出した。

「あれ? 青木に月島。珍しいな、お前達が一緒にこんなところに居るなんて」

「こんなところとは何だ、章吾出入り禁止にするぞ。ケーキ食わせねぇぞ」

「えーっ、それは困る。啓介さんごめん」

 しょんぼりした赤月に俺達は肩を叩いて慰めつつ笑った。

「あーっ、やっぱり居た! レイの言った通りだ」

「あれ、コウジも一緒なの? ははん、さては自分一人で面倒見られなくて、コウキに助けを求めたのね~。あ、ショーゴ、ありがとねコレ」

 玲児と真琴が入って来るなり的確にツッコミを入れて来た。

 玲児は昼間買い物に出たのだろう。綺麗なお姉さんに化けていて、これじゃジイさんもたぶらかされても仕方ないなとおもったのだった。

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