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探偵事務所を手を繋いだまま出ると道路を渡って真向かいの1階にある喫茶【まどろみ】に入る。
ちょうど昼時だったし、ここは叔父の経営する店で頻繁に通ってるからだ。
ドアを開けると入口に取り付けてある鈴がカランと鳴った。
「いらっしゃい。お、瞬介。珍しいなお前が小さい子連れてるなんてよ」
「啓介兄、俺はいつものな。真哉何が食べたい?」
真哉は珍しそうにキョロキョロ店内を見回すとメニューを見てハンバーグとクリームソーダを頼んだ後言った。
「喫茶店は初めて入りました。連れて来てくださりありがとうございます」
「お、おう。それは良かったな。ここは美味しいから期待していいぞ。そういえば、さっきから持ってるそのデカいのは何だ?」
真哉は大事そうに抱えた本をテーブルの上に乗せた。ずっしり重そうなソレの表紙には『
「それ、ジイさんの本か?」
真哉はこくりと頷くとページを大事そうにめくる。芸術にはさっぱりな俺でも凄いジイさんである事は分かった。
それと共にジイさんの行動範囲はとてつもなく広い事も知った。海外まで探さなくてはいけないとは。赤月も大変だ。
「お待たせ、坊やお待ちかねのハンバーグに瞬介にはスパゲティナポリタン『まどろみ』スペシャルだ。熱いから気を付けろよ」
鉄板に乗せられたハンバーグからはジュージューと湯気が立ち
俺も自分で注文した品物を食べる。鉄板焼きナポリタンだが、周りに溶き卵を流し込み食べる頃には丁度良い塩梅になる様に計算されてある。大好物のコレは週3は食べている。
食べ終わった頃合を見てドリンクが運ばれて来て書き入れ時が終わったからか、啓介兄がドサリと隣に座り
「なんだ美味そうだなそれ、1口くれよ」
店のメニューに無い物が出るのが賄いの醍醐味だ。今日はさば味噌定食らしく味噌で煮込まれた照りのある鯖がツヤツヤと輝いて見えてゴクリと喉が鳴った。
「やだね。材料はまだ有るから夜また来いよ」
お腹一杯の状態の時には啓介兄は絶対シェアしない。『空腹は最高の調味料』だからだと常日頃言っている。
真哉も俺も大満足で店を出ようとした時、店のドアの鈴がカランと鳴って、見知った人間が入って来た。
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