藍無幽霊

@koonaka2002

幽霊となって、視る事にした

僕は死んでしまった、余りに儚く。


海に溶ける泡みたく、自分がどのように死んだかもわからず儚く。


死ぬまでの20年そこそこ楽しかった。


そんな僕にも、後悔があった、


だから幽霊になった。


僕には、赤西 公子という彼女がいた。


別に彼女のことが好きすぎて幽霊となって現世に残るとかそういう青いことではない。


むしろその逆で


僕、青峰 司を殺した犯人と疑っているのだ。


彼女を疑ったのにも理由があった


第一に僕はいたって健康だったと自分では思っている。この点に関しては唯一間違いかもしれない。


第二に僕が死んだその日にあったのは彼女だけ、ほかの人には誰にも教えてない。


第三に僕は殺された瞬間を認識していない、


第四に彼女の家で眠っている間に僕は死んだ


第五にこれは死んでから知ったことだが僕は自殺として世間から抹消された。


こう聞くと恨み節に聞こえるかもしれないが、別に恨んでないこれは至って強がりではない。


もしも、もしも僕を殺したならばその理由が知りたかった。


ヘタを付けたらリンゴにも見える髪型に、桃のように赤みがかった頬とアクリルガッシュを原色でそのままぶちまけた感じの真紅の唇を持つ彼女が、美しいあの人が何を思って殺ったのかを知りたかった。


あの人の澄んだ赤さを中まで拝見したいと思った。


それでせめて、僕を殺すに値する理由が知りたかった。


ただそれだけだった、


・・・・・・・






・・・・・・・


僕が殺された日の次の朝独特すぎる感覚に襲われた。


まるで、夢の中で高いところから落ちたみたいな浮遊感を感じたのち、恐怖から足をばたつかせていると


目覚めが来て起きてみると自分にあるはずだったものがなくなっていた。


いや正確には、世界にある筈のものが


重さだ。


重さが消えたその時なぜか僕は、この世の疎外感を重荷の代わりに感じてしまった。


その後、何かを確認しに彼女が来たのを覚えている。


僕を認識できるはずの場所から、明らか僕ではなく、僕の斜め下を見つめていた、そこでなぜか「ここにいます」とは錆びついてしまったようで言えなかった。


視線を辿ると僕がいた。


正確には死んだ僕がいた。


人間死んでしまったらみな同じとはいうけれどやっぱり違う。


経験者の僕が言うんだから間違いない。


ドッペルゲンガーにあってしまったみたいで異常な気持ち悪さだった。


それだけで深すぎる衝撃だったのに、彼女は徐に携帯を取り出しどこかに電話をし始めたかと思うと僕は会話のすべてが聞き取れたわけではなかったがこの言葉だけは聞き取れた「私の友人青峰 司が遺書を書いた状態で死んでいる」僕は青緑に錆び切った銅を深黒い海に落とされた気分になった。


その時何となく、分かりたくもない状況が分かった


思い出を牛より多く反芻した。


わからなかった全てが、


やがて少し時が経ち警察が入ってきた。


そこで繰り広げられる会話は、フランス語の授業の講義より理解できないのに全然眠くはならなかった、悪魔に耳をあげたい気持ちになった。


何を思ったのか反射的に、彼女の部屋から外に出てマンションの五階から、言の葉にはならない叫びを打ち上げた。


「ああああうああああ」


 






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