第十一話 「迷い」

"ジジッ――――....


「それじゃあ・・・」


「ああ....」


"カタ"


鮎人は、ゴーグルを外すと


広いホールの入り口の側の


テーブルの上に置かれているパソコンを


操作しているイに視線を向ける


「・・・じゃあ、犯人は、決まりって事か?」


「・・・ああ」


「え~ 何!? もしかして....


 犯人、分かったの!?」


「・・・・」


澪が二人の会話を聞いて驚いた様子で声を上げる


「・・・・」


「・・・鮎人さん?」


「(何か――――....)」


「どうかしたの? "犯人"分かったんでしょ?」


「・・・・」


「どうしたんだ、鮎人?」


「いや・・・・」


第四の殺害現場。


「(確かに、逆再生した映像の中では


犯人は、アイツの様だが―――....)」


「・・・今見た映像によれば、


犯人は、"複数"だ。


・・・違うか?」


「(・・・・)」


「――――鮎人さん?」


「(何だ――――....)」


確かに、今イが見せた第四の殺害現場の映像。


「(・・・・)」


そして、今まで起きた別の殺害現場の映像から


浮かび上がって来るこの事件の犯人は、


"あの二人"しかいない――――


「(だか、もし"アイツ"が犯人なら、


今までの――――....)」


「鮎人?」


「・・・・いや、」


鮎人の頭に、今回の


VRゲームが始まる前に船内で見た


一人の"女"の姿が浮かんでくる――――


「(あれは....確かに―――...)」


「鮎人さん、犯人が分かってるなら


さっさと、そいつ捕まえた方が


 いいんじゃない!?」


「・・・・」


「鮎人・・・」


「イ...」


「何か別の事を考えてるのかも知れないが


もう、犯人は、"アイツら"しかいない。


・・・そうだろ?」


「・・・そうだな」


"ガタッ"


「それじゃあ、犯人をみんなに知らせるために


私、事務所のみんなを呼んでくる!」


「あ、オイ――――!」


まだ、犯人が辺りにいるかも知れないのに


勢いよく部屋の扉を開け、通路へと


走り去っていった澪を見て、


イは慌ててその後を追う――――


「(本当に、これでいいのか―――)」


"ジジッ ジジジ――――


「・・・・」


何も無い部屋の中に、


イが残したパソコンの音だけが


静かに響く―――――

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