第30話

「着てみてくれ、だったな」


「早速着替えるとしよう!」


「着替えは……」


「ここら辺でいいか」


「どうせ君は動けないし」


「たぶん見えないだろう」


バサッ


「ふふっ」


「かわいいな……」


「鏡見てこよ!」


バタバタ


「おおっ」


「ふふふっ」


バタバタ


「見ろ!」


「どうだ!」


「似合ってるだろ!」


「な!」


「そう思うだろ!」


「そう思うよな!」


「……」


「すまない」


「テンションが上がりすぎた」


「……」


「ありがとう」


「本当にありがとう」


「とても気に入ったよ」


「今まで黒っぽい制服だったからな」


「白のワンピースは印象が変わるだろう」


「かわいい……よな?」


「今すぐ君の言葉を聞きたいよ」


「君のことだ」


「きっと何を着ても誉めるんだろう」


「それでも」


「私は君に誉めてほしい」


「だって君は私の」


「たった一人の繋がりなんだから」


「……」


「それに」


「私は……」


「君のことが好きだから」


「……」


「あ!」


「ち、違うぞ!」


「恋愛感情とかそういうのじゃなくて」


「いや、そういうのかもしれないけど……」


「私が言いたいのは、君とならずっと一緒にいたいなって意味で……」


「もしかして、こっちの意味の方が重い!?」


「え、えーっと」


「とにかく!」


「私はもうすぐいなくなるけど!」


「本当は君とずっと一緒にいたいから!」


「せめて残りの時間は君と楽しく過ごしたいってことだ!」


「分かったか!」


「当然、君に拒否権はないからな!」


「覚悟しておけ!」


ドンッ


「はい!ごめんなさい!」


「……」


「また隣の人に怒られてしまった……」


「毎日夜中に騒いでるからな」


「とはいえあと数日の命だ」


「隣の人には我慢してもらおう」


「……」


「あと数日は私の金縛りが続く」


「だからそれまでは宜しく頼むぞ」


「今日はこれで終わりだ」


「おやすみ!」


「また明日な!」

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