第12話

「ふふん」


「やあ」


「また会ったな」


「いきなりだが教えてくれ」


「君の書き置きについてだ」


「『ご褒美にまたキスしてください』」


「と、書いてある」


「なんだこれは」


「これは昨日の話に出てきたアレだよな」


「帰ってすぐに手洗いできたら良いことしてあげる、ってやつだよな」


「それは分かる。分かっているんだ」


「私が聞きたいのはここだ」


「ここに書いてある『また』とはなんだ!?」


「ど、どういう意味だ?」


「私は君にキスした覚えなんてないぞ!?」


「これは君の妄想か?妄想だよな!?」


「あるいは夢……」


「そうだ、夢だ!」


「君は金縛りの状態で悪夢を見ているようなものだ」


「恐怖と混乱の狭間で、君の潜在的欲求が君に見せた幻覚」


「それが私のキスというわけだ」


「……」


「つまり君は私とキスがしたいのか……?」


「……」


「は、破廉恥だ……!」


「前々から思っていたが君は破廉恥だ!」


「そんな君には罰が必要だな」


「……」


「いや、今はやめておこう」


「うん、次に行こうか……」




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