ばけもの子供の物語 虹
仲仁へび(旧:離久)
第1話
あるところに、虹をつくるばけものがいた。
そのばけものは、死んだ魂が天国に迷わずいけるように、と思って。
空に向かうためのものを作っていたのだった。
ばけものは虹をつくり続ける。
死んでしまった者達のために。
けれど、人間達にはそれが分からない。
「ばけものが虹を作っているわ」
「一体、何をするつもりなんだ」
ばけものと言葉を交わす事ができない人間は、ばけものの気持ちを知る事のできない人間は。
虹をみては恐怖し、虹をつくるばけものを見ては、恐怖をふくらませていった。
ある大嵐の後。
その日もばけものは虹をつくろうと考えていた。
雨上がりの後は、なぜか虹がつくりやすい。
だからこの機会に、頑張ろうと思っていた。
けれど。
ばけものが虹をつくっていると、どこからともなく人間達がやってきた。
「虹を作り始めたぞ」
「今のうちに殺してしまえ」
人間達は、手が離せないばけものを殺してしまう。
「これでもう安心だ」
「得体のしれないばけものが作った虹をになくてすむ」
「ばけものが虹をつくる所をみて、もやもやする事もなくなるな」
虹がなくなると、死んだものの魂があの世へいけなくなってしまう。
お空にある天国へ行く道が分からなくなってしまう。
ばけものは死んでしまうまえに、これから死んでしまう者達を思って、とても悲しんだ。
そうなると、その世は死んだ者達の魂で溢れる事になった。
魂があっちにも、こっちにもあって。
うろうろしているのが普通になった。
そうしてあの世に行く事ができずに、生きる人達の事をずっと見ていた者達は、この世にたいする未練をふくらませていく。
「もっと生きたい」
「もっとしたい事があるのに」
「生きてる人達はずるい」
そうしたら、生きている人達は死んだ人達にとりつかれていってしまう。
みんながみんな、何がおこっているのか分からなくて混乱した。
人が変わったようになる者達が多くなって、悪い事をする人が増えていった。
その混乱が新たな死者をうみだしてしまうという、悪い連鎖に繋がった。
それは、つぎのばけものがやってきて、虹をつくるまで続いた。
虹が作り出された後、ようやく人々は自分達があやまちを犯した事を知ったのだった。
ばけもの子供の物語 虹 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032
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