第2話 薄幸の遠泳、ガラスのリノウ

 先生は自称だった。さあ解散とはならないわけで。もちろん知ってきている参加者がほとんどだった。


「先生は教えられることがあれば誰にでもなれる。もちろん免許や許可がないと学校で、仕事はできないよ」


 体も大きくてリアクションもオーバー、地球人じゃないような気さえする。


「ここには海があるね、先生は泳げるけれど教わりたい人はいるかな?」


 僕たちの方も見ながら声をかけてくれる。どうやらカナヅチはいないようだ。


「遠泳のコツはねゆっくり泳ぐことなんだよ、体をゆっくり動かす。一度やってみようか、ラジオ体操をできる限りゆっくり」


 ラジカセが、べっとカセットテープを吐き出す。回転して差す。カセットテープをみたことがない子どもたちにもさらっとした説明をする。僕らはギリギリ知らない。木村さんもさらっと説明してくれる。 


「ほら、時々聞くでしょ巻き戻し。早戻しじゃなくて」

「あー」


 先生はわざと伸ばしたテープを鉛筆でくるくると巻き戻した。話には聞いていたけど、ずいぶん薄い、本当にテープみたいだ。くっつく方の。それよりも脆いわね、どこか楽しそうに木村さんは笑っている。


 体をひとつひとつ、ゆっくりと動かすこと。だんだん早くなる。自分の意志が自分の体を動かしていることを学ぶこと。ラジオ体操で汗をかいた。流れてきた音源も独特な方言のもので、僕らの知らない言葉がよく知っている同じ動作になるのが面白かった。


 暑い。どこか都会の暑さとは違う。

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