逆光の樹影、ガラスのリノウ

新吉

第1話 逆走の授業、ガラスのリノウ

 今日も僕らはうたを作っている。ぼやーっとした1日を過ごす。夏は特にそれが許されているような気がする。


「学校に行ってくる」

「学校って、あの学校?」

「うん、その学校」

「へぇ驚いた、ガラスのように繊細な君が?」


 驚きのわりに自分の口から冷静な声が出た。あいつを閉じ込めたがっているのはきっと僕の方だ。


「ガラスって液体と固体の中間らしいよ。…海沿いの青空教室、先生がちょっとした有名人なんだ」

「熱中症に気をつけてね」

「なにいってんのさ、君も行くんだよ?」


 そうして連行された。新幹線と電車はヘッドホンで塞いで爆睡のまま移動。マネージャーの木村さんに押されるがまま乗り換え。バスに乗る頃には遠足気分で、サングラスを借りたりお菓子を食べたりして。到着したのは虫と波の声が聞こえる、名前の知らない田舎の廃校だった。


 そこに先生はいた。日当たりのいい校庭側でなく、涼しげな学校の裏に案内され、子どもと、若干名のおとな、僕らのような青年らが集まっている。15人くらい、数えていると先生の自己紹介が始まった。


「今日の出席者はこれで全員かなぁ」


 ムキムキの先生は呟いた。まさか地獄の合宿とか始まるんじゃないだろうな。運動不足だからとかって。


「先生は教えられることは教える、知りたいことがある子はいるかな?」


 しーん


「はい!」

「お、いいね!」

「先生って本当に先生なの?」


 しばらく爆笑。腹を抱えて頭をかかえた。そんな先生に女の子も笑う。

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