むかしのライブ・ルポ

さとみ・はやお

むかしのライブ・ルポ


以下の「ハウンド・ドッグ」のライブ・ルポは、今から39年前、私が週刊誌記者時代に書いた記事です。今の私の原点だと思いますので、恥ずかしながら原文ママで再収録させていただきます。




【グレイト・エスケープ・ツアー同行取材!「ハウンド・ドッグの“嵐のライブ”におとこ心を感じたぜ」】


男がロックするってのは、凄くいいもんだ。女なんかいらない。もちろん金じゃあない。音楽(ロック)そのものが、好きで好きでしょうがないから、演るのさ!


ハウンド・ドッグ。こいつらのライブ、すごくイカしてるんだ。そう、彼らの行きざまそのものがロックだから。新幹線にとびのり、ヤツらの熱いパッションにふれてきたぞ!


昼のネボケ顔も、本番ライブじゃシャキッ!!


「オレたち、東京・大阪に見放されてもやってけるよ。ハウンド・ドッグは、くちコミでここまで成長してきたんだから。いくらでも地方でやってけるさ」


年間100~150のステージをツアーしてきた根性(ガッツ)が、キッパリとこう言わせる「ハウンド・ドッグ」。その、グレイト・エスケープ・ツアーに乱入して、連中の血と汗をかぶってきた。


■ACT1-京都勤労会館。


7月7日、午後6時40分。キャパ1400人の会場は超満杯のサウナ風呂。たまげたです。オープニングからサンダーボルトの120ホン。場内総立ちだ。


やる、とは聞いていたものの、こいつはブッたまげものです。


「WE ARE HOUND DOG! 一年ぶりに京都に帰ってきたぜ、よろしくナッ!」


大友康平(vo)が大見得切ると場内はもう止まらない。7月1日発売のニューアルバム「BRASH BOY」(CBSソニー)の中から「FENを聞きながら」「ナイト・タイムズ」などをグイグイ正常位で押しまくる。パワー全開、カッ飛び400メートル、汗まみれのハード・ファイト・ライブだ。


■ACT2-東京駅。


同じ日の午前11時30分。休みなしのブッ続け20日間ツアーの途中だ。前日まで札幌、釧路、帯広などを巡る北海道ツアー。間髪を入れず関西・九州ツアーへ出発するというその日。


ベースの海藤節生がボヤく。


「ヒデーよな、昨日なんかオレ泊まるとこなかったんだぜ。しょうがないから、上野駅に着いてから浅草行って、飲んでさ、カラオケ歌いまくってたんだ。今朝なんか、山手線の中で、2時間ほど眠っただけなんだよね。眠 いぜ……」


大友「藤村(一清・ds)はどうした? よく遅刻するけど今日は大丈夫!?」


藤村、眠そうな顔で無事到着。


大友「オイ、見ろよ、あれ。ブッチャーだぜ。とゆーことは、長州力も来てるはずだぜ。サインもらってこいよ」


あせってマジックを探したが、見つからない。プロレスがなにより好きなハウンド・ドッグ。憧れのプロレスラーと一緒の新幹線に乗り込んだ。


大友、車中では、サングラスをかけて、さっき見かけたという浜田省吾のマネをするなど、おどけてみせる。メンバー、スタッフ全員疲れきっている中で、今日もひとり大元気なのが彼だ。隣りで、キーボードの蓑輪単志が早見優に聴きホレてる。


大友「早見優の悪口言うと危険だよ。気をつけて、記者サン」


車中では、疲労なんだろうな、ほとんどみんな居眠りぎみ。八島順一(g)だけは、ギターの手入れに余念がない。


3時間後には、北海道とうってかわった蒸しアツーい京都駅に到着。残念ながら(予想どおりかな?)ファンの出迎えはゼロ。会館の楽屋に着くや、大友がバッグのなかから北海道ツアーの汗のまんま、グッショリとしたステージ衣装を引っ張り出して匂いをかぐ。クサいぜ!


わきで、マネージャーがせっせとシャツにアイロンがけ。これじゃ体育会の合宿です。


“飲んで、食って、バカ騒ぎ”これが最高の活力剤!


■ACT3-公演後。


大友「いやあ、ロックンロールってスポーツと格闘技ですよ。で、安酒、安メシ、これがボクらのエネルギー源!」


と、いったんホテルに帰ったあと、午後10時過ぎから焼肉屋での”20人前”食い。これまでの記録は、メンバーほか15人でギョーザ100人分をぺロリ。あらかた食い荒らしたあと--。


大友「そーだ、米のメシが食いたい!」


で、これもガッツガツでぺロリ。女のコの出る幕などありません。そーいえば、連中、まるっきり女っ気なし。グルーピーなど影も形もありません。ひたすら、ステージ→食・飲→快眠の毎日。


大友「プロになっても、ぜーんぜん、生活ラクになってないですね。今でも高級ホテルなんかに泊まると落ち着かなくってね。でも、ボクら音楽バカだから。女ですか? がんばったってどうせはずれるばっかりだし」(笑)


■ACT4-ホテル。


翌朝12時。ホテルのロビーに集合して朝食会。その間にインタビュー。


大友「これまでボクら、アルバムをライブの音に近づけようとしてたけど、どーせ本物のナマにはかなわない。レコードなりの作り方をしようと今回は分けて考えたんだ。吉野金次サンをプロデュースに迎えて、60~70曲のストックからベストの11曲を選んでね。ボツった曲にもいい曲あるんだけどね……」


高橋良秀(g)「ステージは、初めて行く町のほうが燃えるね」


蓑輪「5万人くらいの都市で200人も集まるなんてのはもう大事件なんだよ」


海藤「中高生のほうに期待できるね。限られたおカネ払って来てくれるんだからシビアだよ」


高橋「ボクらにとって11月2日の武道館公演は最終目標じゃないね。1200万人もいる東京で1万人より、小都市の千人のほうがスゴイ」


前夜、泊まったホテルには2チャンネルのテレビがついていなかった。おかげでモンモンたる夜をすごしたメンバー全員、


「ステージで発散するっきゃない!」と、神戸・三宮駅へ。


大友「こうやってツアーに出てるといろんなことがありますよね。前なんか、スタッフのひとりが酔っ払って信号機の上に登ったまま下りてこない。しかたないから110番して、『変なヤツがいる』って通報して。シカトで逃げてきましたよ(笑)


上諏訪(長野県)じゃ、スッポンポンになってクルマに向かっていったり。ヤバいこともわりにありますよ。


そーやって発散して、そのかわり、1年に1回しか見れないお客さんばっかりなんだから、病気だろうが全力投球です」


汗の臭いも消えやらぬ衣装をはおると、今日もまた、ハウンド・ドッグの6人は格闘技ライブのリングへと駆け出して行くのでありました。


日本全国津々浦々、ハウンド・ドッグのライブを見て熱くならない観客なんていそうもない。グレイト・エスケイプ・ツアーのクライマックスは11月2日の武道館 。満員にならなくたって、だいじょうぶマイ・フレンド。あんたらを待ち続ける地方のファンがぎょーさんおりまっせ。(了)

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