調子に乗りやがってクソザコが わからせてやるッ!

助部紫葉

#1



俺はしがない駆け出し冒険者のガンマ。



そんな俺が冒険者ギルド内を1人ぷらぷらしていた時の話だ。


透き通るような水色の髪。小柄だが歳は俺と同じぐらいの美少女。金色の刺繍が入った黒いローブを身にまとい、大きな杖を手にしている、恐らく後衛職、魔術師か呪術師あたりであろう。


そんな少女がひとりぽつんと突っ立ってクエストが貼られているボードを眺めていた。


周りに人は居ない。ぼっちである。むしろ、皆がみな彼女を避けるように遠巻きに行動している。歪な空洞が彼女を包んでいた。


彼女はそれを当然の様に受け止め、実に自然体。その横顔はひとりなのは当たり前だと言わんばかりにどこか冷めきっていた。



実に不快な光景だった。



「やあやあ、お嬢さん!今日も今日とてお日柄もよく絶好のクエスト日和だね!」



とりあえずナンパした。



「……なんだいキミはボクに何か用かい?」



冷めた表情。冷えた声。不愉快さを微塵も隠さずに彼女は答える。



「1人のようだから、もしよかったら、ご一緒にどうかと思ってな」


「……ボクが誰だか知らないのか?」


「いや、まったく知らない」


「なるほど。キミのような無知な存在もギルドにまだ居たのだね。知らいなら教えてあげよう。ボクはかつて雷帝と謳われた元SSランク冒険者であるギルドマスターの一人娘。リゼル=マギだ。まだ成り立ての冒険者ではあるが、そこいらの有象無象よりは実力はある方だと自負している。キミのような一介の冒険者――ん?キミのことは初めて見る。キミも駆け出しかい?」


「ここに来たのは最近だから駆け出しといえば駆け出しだな」


「やっぱりね。そうだと思ったよ。キミのような、うだつの上がらなそうな男は実力も大したこと無さそうだ。実際、大した実力も無い底辺なのだろ?キミとボクとではまったく釣り合いそうにない。よかったらご一緒に?バカも休み休み言ってくれよ。足を引っ張られる事が目に見えてるのにどうして"ご一緒"しなければならないんだい?無駄だろう。そんなことは。キミみたいな奴とご一緒するぐらいなら一人で居た方がマシだね」



イラッ☆


なんだこのクソ生意気なメスガキは。



「でも、もしもキミがどうしてもボクとご一緒したいなら。そうだね。額を地面に擦り付けて誠心誠意ボクにお願いすることだね。そうしたら考えてあげてもいいかな。キミのような底辺男と行動するのは不愉快極まりないが、荷物持ちぐらいでなら使ってあげてもいいかもしれないね。流石にキミのような奴でも荷物を持つこと、歩くことの2つの行動ぐらいは出来るだろ?あ、でも大した量の荷物も運べなさそうだね。これは荷物持ちも厳しそうだ。そうなるとキミに出来ることが無さそうなんだが、どうするんだい?キミは呼吸すること以外に出来る事はあるのかい?なんにしてもキミはこうしてボクの貴重な時間を奪っていることに対して謝罪をした方がいいと思うんだ。キミのどうでもいい人生と比べてボクの人生は貴重なものだからね。謝罪の仕方はわかるかい?まずは膝を折って、両の手のひらを地面につける。そうして顔面を地面に擦り付けながら「ごめんなさい」って言うんだ。ほら、ごめんなさい」




よし。わかったわかった。


このガキャぁあああ!!!わからせてやるッッッ!!!





















「ひぐぅ……!ごめんなさい!ごめんなさいっ!生意気なこと言ってごめんなざいっ……!あやまるっ!あやまりますからッ……!許してっ!許してぇえ……うぅ……」




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