幼少期編 人物紹介 二十話まで

◆徳川新之助(加納源六、のちの徳川吉宗)1684年生まれ

 本作の主人公

 現時点で六歳、最近まで実の親に捨てられ養夫婦の元で育つ。

 親藩 紀州藩 藩主 徳川光貞の四男。

 母親は於由利の方。

 加納源六の時には、自分の生い立ちにトラウマを持ち、人との関係性において素直になれなず距離をとってしまうことが多かった。反面、人の愛情を求める傾向にある。

 徳川新之助となり、実の親(特に母親)と対面を果たした事から、その性質は落ち着きをみせる。

 物事を把握することに聡いため、察しの悪い大人が馬鹿に見えてしまう。

 父親譲りの聡明さと感受性の高さを持つが、幼さ故か、一つのことに囚われ視野が狭くなるが本人は認識していない。



◆徳川光貞

 紀州藩 第二代藩主。徳川家康の十男 頼宣の子

 英邁誉れ高く、政務にも熱心。法令を整備し、治水にも心血を注いでいるため民にも人気を博す。

 嫡男の綱教は元服しており、才も不足ないため、新之助を可愛がっているが家督を譲る気はない。

 家老の加納(新之助の養父)は信頼しており腹を割って話せる仲である。



◆於由利の方 (侍女 お秀のみ一名)

 新之助の生母。出生は定かでないほど身分の低い出自のため、側室筆頭のお萩の方に目の敵にされている。

 本人の性質は気弱で争いを好まず、自ら主体的に動くことはない。

 光貞との関係も湯女として世話をしている際に、言い寄られ身分差もあったこともあり、流されるまま関係を持った。その時に新之助を身籠ったため、側室となる。

 湯女上がりでは外聞が悪いので、藩士 巨勢こせ氏の娘となっているが、藩内で知らぬものはいない。


◆加納政直

 紀州藩 家老。とある事情により於由利の方が生んだ新之助(当時は加納源六)を育てる事になった。

 新之助は実の親に捨てられたと思い、心に傷を負っていたため、養父のまさとしと深く交わることは無かった。藩主の子という遠慮もあったが、次第に反抗期も重なり手がつけられない状態になってしまった。何も手を打たず静観することにした為、更に溝を深めてしまった。その影響により、新之助の住まいでもある加納屋敷の使用人は、新之助に積極的に関わるものがほぼ皆無となった。これが新之助が屋敷に寄り付かなくなる要因となる。

 政治的には中庸。派閥は組まぬが敢えて言うなら藩主派。家老の家柄としては中位である。



◆日吉

 加納屋敷の下男。屋敷内で唯一、新之助と向き合った人物。新之助が身分を捨て屋敷を飛び出さなかったのは、彼が屋敷に繋ぎ止める紐帯となっていたからである。

 出身は加納家領地の農家の三男坊。性質は不器用だが純朴。家を継げないが真面目なため村名主に推挙され屋敷で奉公する事になった。

 新之助の世話担当ではあったが、周りから押し付けられた結果に過ぎなかった。新之助の噂は耳に入っていたが、加納の殿様の子であるから誠心誠意仕えていた。



◆水野知成 1680年生まれ

 紀州藩 家老 水野太郎作家 水野忠知の庶子。

 光貞の小姓として仕えていたが、四男 新之助が光貞の子と認知され、城勤めをする事になった際に側付きに任命される。

 新之助が城内の職務に従事している時以外は、常に側にいる。ちなみに新之助といない時は、木刀を振っている。流派は田宮流。

 田宮流の源流は、神夢想林崎流で始祖は林崎甚助である事から、新之助の師である黒川甚助に勝手に親近感を抱いている。



◆黒川甚助

 海部あま郡 加茂村の代官。出世レースとは無縁で、長いこと現場にいる叩き上げのベテラン。視察の旅で加茂村に訪れた新之助に、租税法についての講釈を行い、人柄、見識に優れる彼は師と仰がれる。昔は新之助に似て熱血漢であった事を述べている。元来の性質は清廉で慈悲深いため、新之助の信条に近い。

 初老の武士で戦国の気風覚めやらぬ時代の生まれのため古風な喋り方をする。

 加茂村の屋敷には家族の匂いがしていない。水野は何か気が付いたようだが、現段階で新之助は気にも留めていない。



◆お萩の方 (侍女 お初、その他五名)

 嫡男 綱教の生母。紀州では名族の湯浅の流れを汲む女性。紀伊の統治を円滑に進めるため、地域の有力者である家出身の彼女が光貞の側室となった。

 気位が高く、自らの血筋に誇りを感じているため、身分の低い於由利の方が側室になる事が許せなかった。

 性質は家族思いでそれ以外との区別を明確にする排他性が強い。また主導権を握る事で安心を得るため、奥の序列を意識し、自らコントロールする事を望む。

 湯浅党の出世頭であるため、湯浅に連なる血族の家臣は彼女を頼る風潮がある。


◆お須磨の方 (侍女 4名)

 三男 長七の生母。お萩の方と同じく湯浅の流れを汲む家の出身。お萩の方が嫡男を産んだため、彼女の下につく。長七のためにと関係を良好な構築している。



◆久野 宗俊

 紀州藩の国家老。紀州における実質ナンバーワン。紀州藩には湯浅の血族が大半を占めるため、その家臣団に影響力を持つお萩の方を抱き込み自らの権力を高めている。

 政治的には保守。国家老派の首魁。



林蔵人くらんど

 紀州藩 庭番。お萩の方付きの侍女 お初の兄。最下級の武士であり、困窮のため国家老の伝令役のような小間使いをして小遣いを稼いでいる。

 野心も大きく今の待遇に不満を持ち、飼い主である国家老にも反感を抱いている。

 性質は酷薄で慎重。他人への忠誠心を持たず自己の利益を優先する。



◆宮川作左衛門

 紀州藩 藩士。有田郡などを担当する新任の郡代。新之助の指導官でもある。

 郡代や指導官になった経緯には藩の上層部の意向があると本人は述べている。その意向もあってか新之助への当たりが強い。

 性質は粗野で威圧的。役人としての能力は高くないようで、頭の回りも良くない。視察から戻った新之助にやり込められる事もあった。



◆田野道利

 有田郡 野村の代官。視察に赴いた新之助を小僧呼ばわりして馬鹿にした。宮川が担当の郡代になってから威圧的な態度を取るようになった。村民からもそのような証言が出ている。元々の性格は違うようで、強く出るために酒を飲んでいる疑いがあり、明るいうちに酒を飲んでいる事を新之助に気づかれている。しかし仕事には熱心に取り組み、税を多く集めた事を誇りに思っている。

 性質は小狡く小心者。上に媚び下に強く出る典型的な小役人。



◆治右衛門

 野村の名主(村長)。田野をあしらう術を持っていてうまく転がしている。村の平穏に心を砕いている。



◆よね

 次右衛門の妹。既婚であるにも関わらず、多野に言い寄られ迷惑がっている。誘いを断ったため、夫が田野から嫌がらせを受けていた。視察に来ていた新之助に相談を持ちかける。



◆吾作

 よねの夫。真面目で寡黙。名主の妹と結婚できている事から分かる通り、村人の評価は高い。そのおかげもあってか、田野の嫌がらせを受けているが村人の助けで問題は回避できている。

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