夢のような毎日

夢から

醒めない。


永遠に続く無限ループ。

始まりは決まって、自室のベッドで目覚めるところからスタートする。


・・・ああ・・・まただ。見慣れた景色だ。


どうせ

獣のように野を駆ける夢か

鳥のように空を飛ぶ夢か

死んだ爺さんの夢か

そんなところだろう。


そうたかをくくっていたのだが、

しかし今回は違った。


何か現実感、臨場感がある。

何度も何度も夢から醒める夢を見た私でも

今回が夢か現実か分からない。


早く醒めたいと思っていた前回の私は彼方へ。

どれぐらい寝ていたんだ?

本当に現実なのか?

不安が何層にも折り重なって、

私の上に積もっていく。


ゆっくりとリビングへ向かうドアを開ける。

そこには妻と、5歳になる息子がいた。


「おはよう」


声をかける。

すると威勢のいい声が2つ返ってきた。


「おはよお!!」

「あんたまだ出てなかったの!?

 遅刻じゃない?ほら急いで!!」


ふと時計を見ると、既に仕事が始まる時間だった。

夢か?現実か?なんて言ってゆるりと思考を巡らせる私は何処にもいなくなった。


とにかく急ぐ

とにかく急ぐ

出る

走る

走る

走る


いつもと変わらない景色を駆け抜けると

いつもの駅が見える。


ホッとした。

これはきっと現実だ。

そしてやはり夢よりも良い。

何気ない現実が宝物なんだ・・・。


また思想に励む私には周りが見えていなかった。

気付いた時には、私は宙を浮いていた。

強い衝撃と、トラックの急ブレーキの音が同時に刺激してくる。


さっきまで現実を噛み締めていた私は思う。

(死にたくない!夢であってくれ!・・)



・・・・・


自室で目を覚ました私は動転していた。

今が夢なのか、

それとも死後の世界なのか、

私には判断つかなかった。


私は家の外に出て、そこらじゅうを飛び回った。

そして発見した。

私の苗字が冠された、葬式会場を・・・。


そうか・・・死んだんだ。


私は死んだ。確かに死んだのだった。

葬儀場を空から見つめ、うなだれる・・。


そこへ何処からともなく、とある男がやってきた。

その男は見た目50歳半ばといったところか、そして何処か懐かしい趣きがあった。


男は私の肩をポンと叩き、そしてこう言った。

「50年振りだね。父さん。会いたかったよ。」





私は死んでいた。確かに死んでいたのだった。

50年も前に。

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