傾いた会社
「これはオフレコなんだけどな、
ウチ、そろそろヤバいらしいぞ」
先週辞めていった上司は
そう言い残して去っていった。
社内報をちゃんと読んでいれば分かる事だが、
ヤバいはずはない。
業績は良いし、人もどんどん増えている。
今辞めるなんて考えられない。
ところが辞めていく人間は皆口を揃えて
「ヤバいらしい」
なんて言う。
私は流石に不安になっていた。
正直強がっている面もあったのだ。
幸い人事に仲の良い同期がいたので、
その辺について聞いてみた。
「最近定期的に誰か辞めてくよな。
でも新しい人はどんどん増やしてる・・。」
同期は少し嬉しそうに応える
「おう、そうだな。どんどん増やしてる。
業績いいからな。」
私はいよいよ核心に迫る。
「業績はいい・・はずだよな?
でも辞めてったやつら、
皆『そろそろヤバい』とか言うんだよ・・」
不安そうな私をよそに、同期は大笑いした。
「お前もとうとう気付いたか。
お前とは長い付き合いになりそうで
良かったよ。」
わけが分からず言葉の出ない私に
同期は続けた。
「あれはな、ウチなりの人事施策なんだよ。
分かりやすく言えばリストラだ。
でもリストラなんて
おおっぴらにできないだろ?
だからリストラしたい奴の周りで
『そろそろヤバい』なんて噂を流すんだ。
するとそいつ自ら辞めていく。
いや〜ウチの部長も
なかなか悪い事考えるよな〜・・」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます