惑星探査用ロボット

ここはトアル星。小さな星だ。


この星では今、とある問題の解決が急務だ。

それが『人口爆発』である。


医療技術の向上によって出生率がアップ、平均寿命もアップ。

伴って、人口が増えすぎるという問題が発生している。


このままでは星の資源が枯渇してしまう・・

悩みに悩んだ住民たちは、隣のノショプ星へ住めないかと考え始めた。


かくして、ノショプ星への移住計画が、識者によって立てられた。

それによると、調査に30年、移住に10年かかってしまうという。


しかしこれでは資源枯渇のスピードに追いつかない・・・。


そんなある日、1人の男がロボットを連れて現れた。

見た事のないスマートな出立ちのロボットに、皆は釘付けになった。


男が言う。

「これは私が作ったロボットだ。惑星の探査にきっと役に立つ。

ノショプ星には誰も行ったことが無いのだろう?

凶暴な生命体や、恐ろしい怪物がいるかもしれない。

そんなどのような危険が待っているかも分からない星に、このロボットはピッタリだ。

まず・・」


男がリモコンを操作すると、ロボットが滑らかに動き出した。


「このリモコンで操作する。このように、馴れてしまえば細かい操作もお手のものだ。

また、リモコンの上部にモニターを取り付けてある。これは、ロボットの目についたカメラの映像を映し出すためのものだ。

暗い時は、このボタンを押せば目が光るので、何も見逃す事なく調査ができるだろう。」


識者たちは頷いた。

これがあれば調査は1週間、いや、5日で済む。


早速出発の準備に取り掛かった。

準備と言っても行くのはロボットだけなので、

5日分の燃料缶を積んで、それだけだった。


探査船はすぐに出発し、

間もなく、ノショプ星に到着した。


男はロボットを操作して、早速ノショプ星に降り立った。

辺り一面岩だらけの星だった。


「よかった、突然襲ってくる装置や生命体の類いはないようだ・・・」


ホッとしたのも束の間、

横では識者たちがああでもないこうでもないと指示を出す。

「右に行ってくれ!砂が左に向かって吹いている、右の方に海か何かがあるかもしれない!」

「いや!そこは左だろう!一旦丘の上に上がって、周りを見渡すべきだ!」

男は必死に操作するも、二転三転する指示に頭がどうにかなりそうだった。


・・その時!


『ガコン!・・ガガガガガ!ガガガガガ!・・』


ロボットの脚が突然動かなくなった。


「何が起きたんだ!」

「早く状況を報告しろ!」

「やっぱり右に行くべきだったんだ」

識者たちが混乱する中、男はロボットの顔を下に向けた。


しかし、よく見えない。


「ライトだ!ライトをつけろ!」


男は指示通りライトをつけたものの、やはりよく見えない。

どうやらカメラのレンズが、何かで曇ってしまったようだ。


男はしばらく黙った後、告白した。


「すまない・・このロボットはレンズを拭く手段を持ち合わせていないんだ・・」


識者たちは落胆した。

しかしぼんやり見える映像や音から、なんとか状況を把握しようとする。


「岩だらけだったな・・足場が悪いのか?」

「停まる直前、何かに引っかかったような音がしたぞ」

「右の方が見たかった、俺はサーフィンが好きなんだ。」


そしてこう結論付けた。


「足が岩場に引っかかり、動かなくなってしまったのだろう」と。


そして


「ひとまずの安全は確認できた。まずは私たち識者だけで行ってみよう。」とも言った。





早速出発の準備に取り掛かった。

だが今度はそう早くはいかない。

識者たちは、それぞれがそれぞれの得意分野で、思い思いに準備をした。


「この顕微鏡を持っていこう。微生物ぐらいならいるかもしれない。」

「この辞書を持っていこう。生命体がいれば、何とか言葉を交わせるかもしれない。」

「これとこれと、あと水着を持っていこう。海があるかもしれない。」



探査船はようやく出発し、

間もなく、ノショプ星に到着した。


識者たちは開いたドアからロボットの様子を見て愕然とした。


ロボットの足はドロドロに溶けていた。

岩の地面からは強力な酸が滲み出ており、

砂のように見えた粉塵は毒の霧だった。


毒の霧を吸った識者たちは次々に倒れていった。

ただ、一人を除いて・・。


「俺はダイビングも好きなんだ。

 皆もレギュレーターを咥えていれば良かったのに。」

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