秘色の此岸花 

日高翔莉

第0話

 令和史上最大のテロ組織、「彼岸花レッドスパイダーリリー」。


 そこには犯罪をプロフェッショナルとするエリート達が集う。暗殺、スパイ、爆弾、薬物、拉致…。数えきれないほどの分野があり、それぞれが向いている仕事を行っている。


年間100億以上が被害総額となり、強盗、空き巣、ひったくり、詐欺から麻薬、違法ドラッグの密売から化学兵器を用いたテロ、民間施設や交番への襲撃といったものまで幅広い犯罪が繰り広げられている。最近のテロでは死者二十六人、負傷者八千人を数える大規模なものまで行われた。


 しかし、全ての人達がこの仕事を望んでしている訳では無い。組織の3割は拉致された人々である。多くは子供であり、拉致された子供は「選ばれし子供達」、志願した子供は「幸せを望む子供達」と呼ばれている。子供達には「保護者」が付けられ、成果によって食事や環境、地位などが変わってくる。


 また、子供達への教育や道徳もやはり一般とは異なる。


教育では、社会や国語が無く、逆に英語は必須科目となっており、その他32カ国の言語は扱えて当然と云われる。特別教科もあり、爆弾や銃の基礎知識や実技も行われる。


道徳では、暗殺や殺人はこれからの未来をより良くする為の手段であり、決して避けることの出来ない、正しい 行為であると「正当化」されている。道徳、というより洗脳、の方が近いのかもしれない。


「選ばれし子供達」の全員が犯罪についての法や倫理を知らない。その為ただからの命令に従って動いている。





 ―何も知らず、何も考えず、ただ黙々と指示に従う。正義に酔い、己の正しさを追求する。それは、一時、日常、日々その時では楽であり、幸せかもしれない。しかし、「真実」を知る苦しみはその楽さや幸せさえも超えてしまう事もまた避けられない事実なのである。

 

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