神のお導き
龍沢雷雨
神のお導き
私は神を信じている。今日も祈りを捧げてきたところだ。こうして毎日祈っていると、たまに神からのお導きがある。
最近、付き合っている女性がいるのだが、そろそろプロポーズを考えている。そこで今日は神にどういったプロポーズがいいのかを聞いてみた。そうしたらなんて答えたと思う?メリーゴーランドに乗りながらプロポーズをすると成就する。そう言ったんだ。信者の私も、流石に耳を疑った。いや、実際は脳内に語り掛けてきているから耳ではないのだが。
メリーゴーランドといえば、音楽がなっている中馬に乗ってくるくると回る遊具だ。どうやってプロポーズをするべきなのか。まず、かなりの音量の曲と離れた位置の馬にまたがった状態で声は聞こえるのか。指輪は出せるのか。
「う~ん」
「どうしたの?」
「プロ……ゴルファーになるにはどうしたらいいかと思ってね」
危ない。今私に問いかけてくれたのが私の恋人だ。あまりにも難題過ぎて危うく本人に暴露するところだった。
「あなたそんなにゴルフ好きだった?知らないわよ。まずゴルフ道具を買うことから始めたら?」
どうやら誤魔化せたようで安心した。しかし、本当にどうしたものか。私には考えが浮かばないのでとりあえずメリーゴーランドがある遊園地に指輪をもって行くことにした。
*
「遊園地は久しぶりね!私メリーゴーランドが大好きなのよ!最初に乗りましょ!」
まずい。全く考えが浮かんでないのにもうメリーゴーランドに乗ろうとしている。今プロポーズできるわけがない。何ならプロポーズの言葉さえ決まっていない。
「あ、あのさ。最後にしない?」
「どうして?」
「私今はジェットコースターの気分なんだ」
「あら、だったらジェットコースターに行って来れば?私一人でも乗るわ」
ああ、私の恋人はどうしてこうも頑固なんだろう。
「だめだ!私は君と先にジェットコースターに乗りたいんだ!」
「じゃあ、あとででもいいじゃない。なんで最後にメリーゴーランドにするの?」
「夜のほうが綺麗だからだよ」
「昼間でも景色が見えて楽しいわ」
「もう、君はどうしてそうなんだ!」
「あなたこそどうしていつもそうなのよ!」
おかしいな。私は彼女と喧嘩をしにここに来たわけではないのに……。
「君にプロポーズをするためだよ!!」
遂に口走ってしまった。私の顔と彼女の顔が一気に真っ赤に染まる。こんな形でプロポーズする予定ではなかったのだが、失敗してしまった。きっと承諾してもらえない。
「私もよ」
「え?」
「私も、あなたにプロポーズをするために頑なにメリーゴーランドに乗ろうとしたの」
「そう、か、じゃあ、結婚しよう」
指輪を彼女の指にはめようとすると、私の手を止めてきた。
「ダメよ。メリーゴーランドに乗ってからじゃないと成功しないわ」
ああ、どうやら私の恋人は私と同じ神の信者だったようだ。
神のお導き 龍沢雷雨 @raiu_ryuzawa
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