「僕は1953年の昭和28年生まれだから、戦後発展の真っ只中を生きて来たんだ。最初は家電なんてない時代から、次々と新家電が誕生して家の中に侵入して来たよ」


「そうね、私もその時代を生きて来たわ。でも、今の我が家は物に溢れ過ぎていっぱいよ。今はあの頃の物がひとつひとつ増えて行く喜びの反対で、壊れて捨てたり、誰かにあげて減って行くと喜びを感じるようになったわ。人間の心理って不思議ね」


「ゴミ屋敷、ミニマリスト…物にまつわる日本人の変化がそれを象徴してるね」


「でも、物を処分するにも簡単には行かないわ。その物には思い出が詰まっているし、買う時に支払った代金の対価は、汗水流した労働の結果だもの。そう簡単には捨てられない。同じ捨てたり、処分するのにも、それなりの納得や気持ちの整理が必要だわ。自分の産んだ子どもをそう簡単に人に任せられないのと同じかも…」


「とにかく、物でも人でも、自分が一度持ったものへの愛着と責任感は一緒かもな。その辺が人間のココロの不思議な所だな」


二人のドライブデートは、心地良い風に運ばれ進んで行った。

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