1.2 新しい人生が始まった

 靴を履いたまま玄関を通り過ぎすぎるとは違和感を感じたけど、そもそも上がり框がないから玄関という概念がないのかもしれない。けどいつか慣れるんだろうと思う。

 玄関を通り過ぎると、リビングにつながっていた。4人用ダイニングテーブルが部屋の中央に置かれていて、玄関の反対側のところにキッチンがあった。キッチンには冷蔵庫らしき大きな箱が置かれていた。その大きな箱を開けてみると、冷気はなかった。けど一番下のところに氷を入れておくような上の部分が開いている小さな箱があった。文明が地球よりも発展していないのだろう。キッチンの水回りは特に日本と変わらなかった。

 私の暮らしていた部屋と同じように、コンロはビルトインコンロではなかった。あとから設置されている感が物凄くある。でもコンロの裏にはガス栓らしきものはなかった。どうやって使うのだろうか。説明書を探すついでに、キッチンにある備品を見てみることにした。

 キッチンの隣には小さい食器棚があって、その中には大きい皿、中くらいの皿、小さい皿がそれぞれ5枚ずつ収納されていて、お箸も5膳あった。そのほかにもスプーン、フォーク、ナイフとかもそれぞれ5本ずつ入っていて、普通の生活をするのには必要十分なものは揃っていた。食材さえあればすぐに新生活を始めることができるようになっていた。これも神様が与えてくれたものだろう。しっかりと敬わないとバチが当たりそうだ。

 でも一つだけわからないものがある。キッチンの勝手口の向こう側にある大きな窯だ。窯というくらいだからパンとかを作るのだろうけど。なぜ窯をつけてくれたかは本当に分からない。パンを売って生計を立てろというのだろうか。それかパンを自分で作って主食にしろということだろうか。パンとかマインクラ〇トとかでしか作ったことのない私にできるのかが心配だ。

 一通りにキッチンを見終わった。目的の取扱説明書も見つかった。さて。どうやって使うのだろうか。

 かくかくしかじか。ふむふむ。なるほど。

 コンロの一番左端にある電池入れみたいなところに魔力をつぎ込むらしい。……この世界魔力があるみたいだ。異世界って感じがする。でも魔力ってどうやって発動するんだ?

 とりあえず取扱説明書に書いてあったように、電池入れみたいなところに手をかざしてみる。そうすると電池入れの部分が淡く光りだした。


「ひ、光った!」


 電池入れの部分。もとい。魔力入れの部分はそのあと30秒ほど淡く光り続けて光らなくなった。説明書によるとこれで充電は完了で1年間持つらしい。もし魔力が切れそうになった魔力入れの部分が赤く点滅するようだ。

 おそるおそるコンロのつまみをまわしてみると、炎が出た。原理がよくわからないけど、ちゃんと炎が出て一安心だ。

もしかして水回りも同じなんじゃ……と思い、説明書を見てみると、私の予感は当たっていた。同じように魔力を入れるところを探して、魔力を入れておいた。同じく一年持って、切れかけたら赤く点滅するみたいだ。

 私はキッチン以外にも一通り家をまわった。といっても残りは寝室とトイレとお風呂があるくらいで、普通の家だった。トイレとお風呂が別なのはありがたい。

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