COV2019(コード・オブ・ヴァーミリオン)

@nakatomi-yuka

第1話 『湖水』での惨劇


☆ この物語は「とある惑星」にある「とある国」を舞台にした「異世界ファンタジー」である!



■ 『湖水』での惨劇


 ――これは今から十数年前の出来事である。

 『十二国(じゅうにこく)』と呼ばれる国の南西部の山間(やまあい)に、『湖水(こすい)』という名の小さな集落(村)が存在していた。

 彼らは「犬」や「鶏」、「山羊(ヤギ)」等と暮らしをしては、二千年前からの“変わらぬ日々”を営み(いとなみ)続けてみせていた。

 けれどもそんなある日の事、彼らに「悲劇」が訪れた……。


 ――その日の夜は“清涼感のある虫の鳴き声”が聞こえて来る、少し涼しい夜だった。

 空には「丸いお月様」が浮かんでいては『湖水』を明るく照らしており、全ての民は「石壁造りの家」の中にて眠っていては、家の外では「(山羊の繊維を染色した)織物で出来た旗」が風に吹かれて「バタバタ」と音を立てていた。

 そしてそんな集落を見下ろせる山の頂(いただき)に、「ゼロ」という名の人物と「ワン」という名の人物が立っていた。

 ――彼らは『十二国特殊部隊』の人間で、暫し(しばし)の間“時が来る”のを待っていた。

 そしてやがては「分厚い雲」が“満月を隠した”その時に、ゼロは「命令」を出していた。

「……始めろ」

 それは「湖水」を“完全包囲”している数十人の「特殊部隊」に対する命令だった。

 ――直後、

『『『バタバタバタバタ……!』』』

 と、「暗視ゴーグル」に「迷彩服」、「自動小銃」を装備した「特殊部隊」のメンバーが民家目指して駆け出していた。


『!』

 最初に「異変」に“気が付いた”のは屋外で飼っていた「犬」だった。

『ワンッ! ワンッ! ワンッ! ワンッ!』

 犬は“外敵”の存在に気付いては、“吠え声”を上げてみせていた。

『『『ワンッ! ワンッ! ワンッ! ワンッ!』』』

 そして彼方此方(あちらこちら)から続々と「犬の鳴き声」が上がり遣り(上がりやり)、住人達は目を覚ます。

 ――この時、とある住人が、

「(オオカミの群れでもやって来たのか……?)」

 と、思いつつ、寝惚け顔(ねぼけ顔)にて猟銃を手にしては“家の外”へと出てみせた。

 ――すると、

「!?」

 そこには一匹の犬が“殺されて”おり、「自動小銃」を手に持った三人の男が立っていた。

 ――そして後、

『ダダダダダダダダダ!!!』

「!!?」

 と、住人は行き成り(いきなり)撃たれて死んでいた。

 ――同じ頃、

『『『ダダダダダダダダダダダダダダ!!!!』』』

「うわーっ!!」

「キャーーっ!!」

「やめろーっ!!」

 村の彼方此方から“叫びの声”が上がってみては、

『『『ダダダダダダダダダ!!!』』』

 と、「特殊部隊」の面々は“特に気にする”ような事もなく、『湖水』に住んでいる人々を虐殺(ぎゃくさつ)し続けてみせていた。

「た、助けてくれーーーーっ!!」

『ダダダダダダダダダ!!!』

 ――「特殊部隊」の面々は“機械的な作業”を続けてみせた。

 それは“単純な作業”の連続で、「的(まと)」に対して撃つだけだった。

「お願いですっ! お願いですっ! どうかっ! この子だけでもっ!!」

『ダダダダダダダダダ!!!』

 それは相手が“子供を庇う(かばう)母親”だろうと構わなかった。

 “単純な作業”の連続で、「的」に対して撃つだけだった。

 ――そんな中、

「ハアッ! ハアッ! ハアッ! ハアッ……!」

 とある住人が“家を飛び出して”みていては、夜の闇に紛れながらに“山を越えよう”としてみせていた。

 けれども“それ”は想定内。

『ダダダダダダダダダ!!!』

「うわっ! うわああああっ!!」

 その人物は“撃たれて”は、殺されてみせてくれていた……。

 ――――――

 ――――

 ――そして、夜が明けた。


「…………」

 ――今、『湖水』には“一人の生存者”だけが存在していた。

 この人物はとても賢くあって、静かに身を潜めては“生き延びる事”が出来ていた。

 けれども「その人物」は“朝が来て”も尚(なお)動かなかった。

 「その人物」は“敵がいまだに残っている事”を“警戒”し、更に半日“身を潜めて”は、“夜まで待つ事”にしてみせた……。

 ――――――

 ――――

 ――そして、「夜」が来た。

 「その人物」は「事実を皆へと伝えよう!」と心に誓うと、“行動を開始”してみせていた。

 ――が、

『パンッ!』

「!?」

 「その人物」が家を出た直後の事、「その人物」は“頭に銃弾”を受け遣ると、

『ドサッ!』

 と、“地面の上”へと倒れては、死んでしまってみせていた……。

 ――そうである。

 この「思慮(しりょ)深い者」の行動ですら「特殊部隊」からしてみれば「想定内の出来事」だった。

 ――と、「ゼロ」は言った。

「――こちらゼロ。全ての住人の死亡を確認した……。死体の回収作業を開始しろ!」

「「「ハッ!」」」

 言われて「特殊部隊」の面々は“集落の外”に停めてあった「ジープ」を村の中へと移動をさせると、その中へと「人々の死体」を積み上げだしてみせていた。

 ――――――

 ――――

 ――暫く(しばらく)して後、「ワン」が「ゼロ」へと尋ねて(たずねて)みせた。

「隊長、“戸籍に載って(のって)いた人物”は今ので最後ですか?」

「ああ、そのようだな……」

 「ゼロ」は“つまらなさそう”にそう言うと、「ハァ……」と溜め息を吐いて(ついて)みせていた。

 ――そして後、

「さっさと“ダムを造る事”を受け入れときゃあ、“こうならすに済んだのにな……」

 と、“呆れる(あきれる)ように”言い遣った。



■ 『湖水ダム』にて


 ――そして、現在。

 嘗て(かつて)『湖水』という名の集落(村)があった場所には、現在「大きなダム」が出来ており、村は“ダムの底”へと沈んでは「観光地」と化していた。

『ブクブクブクブク……』

 そして今、一人の「肌黒い男」が酸素ボンベを背負っては「ダム湖」の中を潜水していたのだが、男の眼下には「石壁造りの古代の町」が見えており、水の中に広がる“その様”は幻想的に見えていた。

『ブクブクブクブク……』

 ――と、「肌黒男」はインストラクターに導かれ「大きな建物」へと案内された。

 それは「村長の家」であったのだろうか、とても立派な建物だった。

 ――そこで、

『ブクブクフク……』

 と、「肌黒男」は泳いでは“近付いてみよう”としてみるも、

『ブクブクブクブクブクブクブク!!!』

「?」

 と、急にインストラクターが“それ以上近付いてはならない”と“制止”をしては、「肌黒男」は“近付く事”を諦めた(あきらめた)。

 ――――――

 ――――

 ――

『ブクブクブク……』

 ……それから暫く(しばらく)経って後、インストラクターは自身の「腕時計」を指で差しては、「肌黒男」へと“時間が来た”と伝えてみせた。

『(コクリ……)』

 「肌黒男」は頷く(うなずく)と、“上の方(水面)”へと向かって行っては、やがては水の中より頭を出した。

 ――水中より出た「肌黒男」はクチからシュノーケルを外しては、

「ふぅ~~~っ……!」

 と、息を吐きながら頭を左右に振り遣った。

 すると、インストラクターが「肌黒男」へとこう言った。

「お客様、いかがでしたか?」

「ん……? ああ、良かったよ……!」

「有難う御座います♪」

 インストラクターは笑顔で男にそう言った。



■ 「センターハウス」にて


 ――湖から上がった「肌黒男」は「センターハウス」の受け付けにて“チェックアウト”を行った。

 ちなみに「センターハウス」というのは「湖(ダム湖)」の傍ら(かたわら)にある「広い駐車場を有した建物」の事であり、そこには「売店」や「飲食店」等が存在をしてみていては、“スキューバダイビング体験”の受け付け等もやっていた。

『『『わいわい、がやがや……!』』』

「…………」

 「肌黒男」が周りを見ると、そこには多くの「家族連れ」や「カップル」、「友達同士」が見えていた。

 『湖水のダム湖』は“山の中”にて存在し、そこへの交通の便(べん)は悪かった。

 けれどもインターネット上で「古代の町が水の中にて存在している!」と話題になって、それ以来「観光地」として賑わい(にぎわい)を見せている場所だった。

 ――と、「肌黒男」は“そこらへん”に居たスタッフに対して話を掛けた。

「なぁ、ちょっと良いか……?」

「はい。なんですか?」

「ここにあった集落なんだがな、どうして“ダムの底へと沈んだ”んだい?」

「…………」

 言われてスタッフの“表情”が露骨に強張って(こわばって)みせていた。

 それに対して「肌黒男」は言った。

「おっと! 変に勘繰る(かんぐる)なよ! オレは『アルメリア人』で“観光目的”でここへと来たんだ! 不思議に思うのは当然だろっ?」

「…………」

 ――すると、スタッフは“言葉を選んで”は、こう言った。

「そうですね……、詳しい事情は分かりませんが、良くある“ダム建設”というヤツなんじゃあないんですか? 高度経済成長の時には“色んな場所がダムの底に沈んだ”って聞いていますケド……」

「……そうか、まぁ、そうだろうな……。悪かったな、変な事を聞いてしまって……」

「……いえ、構いませんよ」

 スタッフは“何かを疑うようなカンジ”にて「肌黒男」を見てくれた。

 ――と、「肌黒男」は再び尋ねた。

「ああ、そう言えば……、もうすぐこの国の『建国記念日』なんだって?」

「ええ、来週には『建国記念式典』がありますし、『クマープ皇帝陛下』の演説を聞きに全国から多くの人達が首都の『キンペイ』へと集まりますよ♪」

「ふぅ~ん、そうかぁ……、そいつは実に楽しみだなぁ~……」

 「肌黒男」はそう言うと、“ダムの方”へと体を向けた。

「…………」

 ――この「肌黒男」、本名を「テロドス」と言うのであるが、現在『ロードス=ランド』の偽名を使って『十二国』へと入国していた。

 彼の今の国籍は、「アルメリア人」であるのだが、けれども幼い頃はこの『湖水』の地にて“暮らしをしていた”人物だった。

 そしてそんな彼であるのだが、今回『十二国』へとやって来たのは「とある目的」の為だった……。




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