その4
王族の2人が退室した後、残った面々は顔を上げた。
そして、少し間を開けた後、次々と退出していった。
ロジオール公爵家の親子は特に変わった様子も見せずに、ヘーネス公爵家の親子は再び無表情に戻っていた。
印象的だったのは、ホルディム伯で、絶望と安堵が入り交じったような複雑な表情をしていた。
エリオはその面々を見送るかのように、最後まで部屋に残っていた。
しばらく経っても退出しないエリオを、困惑した表情でこの部屋を管理する2人の衛兵達がドア横に立っていた。
そう、エリオはこの部屋から出たくなかったのだった。
(正直、このまま引きこもりたい……)
エリオは本気でそう思っていた。
稀代の用兵家であるエリオは、この後の展開が完璧に予想できていた。
故に、ここから出ない事が最も安全な策である事を痛感していた。
動こうとしないエリオに対して、声を掛けていいかどうか、迷っている衛兵2人。
エリオはなるべくそちらを見ようとしなかったが、見なくともこちらを見て、困っている事は明白だった。
「はぁ……」
エリオは大きな溜息をつくと、ゆっくりと外へ向かって歩き出した。
これ以上、何の罪もない衛兵達に迷惑を掛ける訳には行かなかったからだ。
とぼとぼ……。
(大人になるって事は、やりたくない事をやる事だと言うけれど……)
エリオは自分を励ます為にそう思う事にしたが、逆に落ち込んでいった。
とぼとぼ……。
エリオはゆっくりとした足取りで部屋の外に出た。
衛兵達はそれを確認すると、両扉を閉める為に、一旦部屋の中に入った。
そして、ゆっくりと部屋の扉を閉めると、両脇に立った。
ふと見ると、ミステリーが発生した事に気が付いた。
部屋に平行している回廊の左右どちらにもエリオの姿がなかった。
衛兵達はそれぞれの顔を見合わせる他なかった。
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