その15

 エリオは、サラサの予言通り、逃げ出していた。


 アリーフ艦隊が離脱しているのを確かめた後、

「敵を牽制しつつ、全速力で現海域を離脱せよ」

とエリオはある意味自分が一番好きな命令を下した。


 それ故なのか、ちょっとにんまりしていた。


「簡単に逃がしてくれますかね……?」

 シャルスが伝令を伝えに行った後、マイルスターはそう聞いてきた。


「うん……」

 エリオはその問いにすぐには答えずに、ルドリフ艦隊に目を遣った。


 それをこれまた不思議そう、いや、得体の知れない者を見るような眼差しで、リ・リラが見ていた。


 自分に降りかかるものに対して、どうも客観的に見すぎる傾向がエリオにはあったからだろう。


 そう、どこか他人事のような雰囲気が含まれていた。


 とは言え、戦いとは相手があっての事なので、自分本位で進められるものではない。


 その辺をエリオは十分に弁えているからこういう風に、態度として表れてしまうのかも知れない。


 ルドリフ艦隊は命令を受けて、再集結している所だった。


 それは、こちらからもはっきりと分かった。


「大丈夫だろう。

 敵も立て直しを優先しているみたいだし、その間に逃げられるだろう」

 エリオはルドリフ艦隊の動きを見て、そう結論を出した。


 それに、逃げ足には自信があった。


「了解しました」

 マイルスターはいつもの柔やかな口調でそう言った。


(正直、閣下とハイゼル候の相性は最悪だから、もっと戦いが続くと思ったが、意外だな)

 マイルスターはそう思いながら胸をなで下ろした。


 - 戦後報告 -


 リーラン艦隊:エリオ艦隊5、アリーフ艦隊20 計25隻

 リーラン艦隊:アリーフ艦隊12隻撃沈

 

 ウサス・バルディオン艦隊:ルドリフ艦隊31、サラサ艦隊12 計43隻

 ウサス艦隊:ルドリフ艦隊8隻撃沈


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