その26

「しかし、みんな、何処まで戦いたがりなんだろうか?」

 戦闘海域を離脱し終わり、エリオはいきなりそう言った。


「い?」

 マイルスターはエリオがまた変なことを言い出したと思い、固まった。


「だって、ルディラン艦隊がルドリフ艦隊の救出に向かった事ってことはそういう事だろ?」

 固まったままのマイルスターにエリオはそう続けた。


 その言葉を聞いて、マイルスターは上官が何を言っているのか、ようやく分かった。


 まあ、解説すると、救出に向かった事により、戦闘の激化を意味するという事なのだろう。


 それをエリオなりの表現で「戦いたがり」と言ったのだろう。


 とは言え、それに対して、マイルスターはどうリアクションしていいのか分からなかった。


「……」

 マイルスターは相変わらず固まっていた。


 固まっている理由は他にもあった。


 あれだけの激戦を指揮している中、ルディラン艦隊が動いた報告はちょっとした合間に入っていた。


 それを聞き流さずに、敵艦隊の意図を正確に読み取った上で、次の作戦に転じていた。


 もう、呆れる他なかった。


 あ、これは空気が読めないのに、事務的にただただ報告を続けるシャルスの働きも大きい。


 空気読めない癖に、上官の性格がよく分かっているので、上がってきた報告をきちんと時系列的に報告していた。


 エリオは聞いていないようで、ちゃんと聞いているのをよく知っていた。


「だって、そうだろ?

 こんな戦略的に特にもならない戦いを拡大していくのだから」

 エリオはダメを押すかのように、マイルスターに同意を求めてきた。


 こういったやり取りにもう慣れたと言いたいマイルスターだったが、こうしてフリーズしてしまう事は度々あった。


 これからも多くの場面である事が予想された。


(この御方はどういう頭の構造をしているのだ?)

 マイルスターは口には出さなかったが、ようやくそういう言葉が頭に浮かんだ。


 そう、ここで、それに対して同意を求めるか?という事である。


 ……。


 エリオとマイルスターがお互い黙ってしまったので、妙な沈黙が流れてしまった。


「閣下、進路、このままでよろしいのでしょうか?」

 シャルスがそう聞いてきた。


 2人に助け船を出してきた。


「ああ、進路はそのままでいい」

 エリオは今やるべき事に集中する事にした。


 今は戦闘を行っていないものの、前方にルディラン艦隊、後方にハイゼル艦隊と、危険に満ちた状況だった。

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