第46話

「リロイ様は今のキャロライン王女殿下の振る舞いに、こうした態度を取っている……もしもキャロライン王女殿下がリロイ様が好ましいと思うように変わったら?」


「……リロイとの関係も、変わるの?」


「かもしれません」


「それが本当だったら嬉しいけど……っ、でも、わたくしどうすれば」


「……………」



戸惑うキャロラインを見て思っていた。

どうやら問題はこれだけではないようだ。

何かがリロイとキャロラインの間を阻んでいるような気がしてならなかった。


そして馬車がもうすぐドレスショップに着くというところで、小さな声が届いた。



「変わりたい……!」


「……!」


「変わりたいわッ!今のわたくしは本当のわたくしが望んだ姿じゃない!このままじゃいけないの……絶対に!以前のように戻りたい。リロイに好きになって欲しいものッ」



キャロラインは顔を上げて此方を力強く見つめていた。

言葉が届いた事が嬉しくて笑っていると……。



「貴女ッ、わたくしをここまでやる気にさせた責任を取りなさい!!!」


「え……?!」


「わたくしがリロイに好かれるまでサポートする為に、側に居て頂戴!」



キャロラインの言葉に目を剥いた。

まさかこんな展開になるとは予想外だったからだ。



「えっと……」


「ま、まさか嫌だなんて言わないでしょうね……!わたくしはっ、貴女が好きになってきたのに今更っ、拒否されたら悲しいわ」



(……デレた)


この可愛さが本来持つキャロラインの魅力なのではないだろうか。

ベルジェ同様、リロイが好きそうなタイプである事には間違いないようだ。

逆に今までよく悪い奴に利用されなかったな、と考えてしまうが国王に溺愛されているというキャロラインの話は有名な為、周囲が目を光らせていたからに違いない。


プルプル震えながら此方を指差すキャロラインを見て吹き出してしまった。

仮面が取れると、思った以上に素直で良い子なようだ。



「友達になりませんか?」


「とも、だち……!?そ、そうね……今までアイカくらいしか親しく話したことなかったから嬉しいわ」


「!!」



(アイカ様……?確かルビーお姉様も)


その名前にゾワリと背筋が寒くなったような気がした。



「キャロライン王女殿下、あの……アイカ様って」


「あの子、とても親切よ……貴女とは考え方は違うみたいだけど」



キャロラインによればリロイとの関係やベルジェに対しての劣等感にずっと思い悩んでいた。

そんな時に優しく声をかけてくれて親切に色々と教えてくれたそうだ。

『キャロライン王女殿下は、もっと王女らしく振る舞うべきですわ』

『ベルジェ殿下に負けないように存在をアピールしなければ』

『舐められたら終わりですわ。そうそう。そのままの態度を続けていればいつかきっとリロイ様だって納得します……だから』



「もっと王女らしくしましょう?って……教えてくれたの」


「え……」


「誰にも媚びては駄目だと、王女として威厳がなければリロイには相応しくないって言わたから、わたくしは一生懸命頑張ったのだけれど……」


「……………」



アイカは味方をしているように見えて、良くない方向に引っ張っているように見えるのは考え過ぎだろうか。

彼女は善意のつもりなのかもしれないが、キャロラインを応援しているようでどこか噛み合っていない。


(なんか……違和感があるのよね)


アイカ・ドノレス。

ドノレス侯爵家の三女で、いつも人当たりのいい笑みを浮かべており、男女問わず仲の良い令嬢や令息も多い。

ルビーやキャロライン程ではないが品があり美しい。


(ルビーの唯一の友人でキャロラインのアドバイザーで、確かジュリエットにも……)



「ちょっと、聞いてるのッ!?」


「…………!!」



なにか掴みかけたところで、キャロラインによって現実に引き戻される。

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