第40話
「は……?」
「あの、リロイ様……?」
何を企んでいるリロイの表情を見ながら、嫌な予感をひしひしと感じていた。
「さて……此処に今回のパーティーのパートナーが決まっていない男女が六人居ます」
「リロイ…………いい加減にしろ」
「兄上だって今回のパーティーだけは公爵家側で参加しなきゃいけないでしょう?」
「そうだが……」
「そこでだ!!この六人の誰かでペアを組むのはどうかな??」
「ちょっと、どういう事ですの!?大切なパーティーのペアをこんな風に決めるなんて有り得ませんわ」
「煩いなぁ……そのまんまの意味だよ。それに王女がいつまでも一人でパーティーに参加するのも如何なものかと思うけどね」
「何ですって!?」
再び小競り合いを始めたリロイとキャロラインを暫く見つめながら思っていた。
珍しくリロイが感情を荒げる唯一の相手。
そしてキャロラインも過剰に反応しているところを見るに、互いに特別な立ち位置に居るのだろうが、明らかに良い方向ではないのだろう。
しかしリロイは何気なく人数に組み込まれているが、先程リロイの誘いを断ったばかりではないだろうか。
「あの、わたくしは先程も申し上げた通り婚約を解消したばかりですから」
「……私は遠慮しておく。今回も一人で参加する」
「ジュリエット嬢も兄上も詰まらない事言わないでよ?僕達もう良い年齢だし、母上も毎回煩いだろう?」
「………………」
「それに彼への良い当てつけになると思わない?」
「当てつけって……今、マルクルス様は何を?」
「今はまだ屋敷に引きこもってるけど、流石にこのパーティーには出て来るんじゃないかな。その時に一人で居るのは危険だと思わない?少なくとも僕達の誰かが居たら、安全だと思うけどなぁ」
「!?」
「伯爵家は今回、かなり金を使って一生懸命揉み消した。彼は首の皮一枚だ。本来はここまで追い詰められる事はなかった。相手は子爵家だったからね……王家が関わったからここまでになったけど今回は僕の提案に乗っておいて損はないと思うけどね」
「確かに……」
「あは!そうでしょう?じゃあ決まりね」
「はっ……!!」
何故こんなにもリロイがマルクルスの事を知っているのか。
そしてどうしてこんなにも口がうまいのか……ただ一つだけ分かることは、彼を敵に回すのは良くないという事だ。
それに、もしマルクルスがパーティーに出席するのならリロイの言っていることにも一理ある。
あのプライドが高くねちっこそうな性格のマルクルスのことだ。
完全に排除出来た訳ではない為、逆恨みしてくる可能性は十分あるのではないだろうか。
リロイの暴走は何処まで続くのだろうかと思いつつ、ベルジェとルビーは何故か目を輝かせながら頷いている。
そんな時、モイセスから視線を感じて上を見上げた。
「なら、私がジュリエット嬢と共に出席しよう」
「……モイセス様」
「その方が安心だろう?」
「はい」
「!?!?」
確かにモイセスが側にいてくれたら安心だと「是非、お願いします」と言おうとした時だった。
「お、俺も剣術と武術は嗜んでいる……!ジュリエット嬢を守ることがでっ、出来るッ」
「ベルジェ殿下……?」
しかしベルジェの方を見ると、何故かスッと視線を逸らされてしまう。
「???」
「わ、わたくしも今回、色々な令息達に……言い寄られて、強くて逞しくて素晴らしいパートナーがいてくださると助かりますわッ!!モ、モイセス様、みたいな……」
裏返ったルビーの声が尻すぼみになって消えていく。
顔を真っ赤にして叫んでいる姿を見て「可愛いな」なんて呑気なことを考えながらキャロラインを見ると「わたくしもリロイかモイセスなら……いいですわ」と言って納得しているようだった。
「あはは!楽しいなぁ……!僕は誰でもいいけどね」
「「???」」
結局、皆が何を言いたいのか分からないままモイセスと首を傾げていた。
何故かくじ引きでパートナーを決めるという訳の分からない展開に溜息を吐いたのだった。
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