第29話
そしてリロイに恋愛相談をしたら最後……揶揄われて何を言われるか分からない。
モイセスに言えば何気ない会話の中でジュリエットの事がリロイにバレてしまうかもしれない。
故にモイセスにもジュリエットの事は言わないようにしていた。
けれどカイネラ子爵邸に何度か通っている事は流石にリロイに知られてしまったようだ。
何か余計なことをやるかもしれないと心配していたが「カイネラ邸ね……ふーん」と言っただけで、最近は不気味な程に静かなのである。
「リロイには……あまり関わらない方がいい」
「…………?」
「それよりもこれからの事を考えよう……!先ずは情報収集と、それから……最近のジュリエット嬢の様子はどうだ?」
「ジュリエットは更に、態度が柔らかくなった気がします。あの男に酷いことを言われて意識を失った時から、あの子の中で何かが変わったみたいで…………それに最近、よく斧を見つめてるって侍女達が言っていました」
「…………斧?」
「きっと彼が憎いのよ……!当然だわッ」
「そう、なのか」
「ですが殿下が助けて下さったお陰で、ジュリエットも……。本当にありがとうございます」
「あんな場面に居合わせたんだ。当然の事をしただけだよ」
「わたくし、殿下にはとても感謝しております。ジュリエットに嫌われなくて本当に良かった」
安心したように手を合わせて微笑んでいるルビーは、ジュリエットの事が本当に好きなのだろう。
「そういえば、今度キャロラインが此処に来たいと言っていたのだが……」
「キャロライン王女殿下が……?」
「あぁ……"お兄様のお相手を見て差し上げますわ"と言っていて、それにリロイも同じような事を言っていた。ルビー嬢には迷惑を掛けるかもしれないが……」
「一応、お父様とお母様に伝えておきますね。ですがこのまま皆様を勘違いをさせたままでいいのですか?」
「それは、勿論よくないが……ジュリエット嬢に、こ、こっ告白をするには互いの事をッ、知らなすぎるのでは……ないだろうか?それに、まだ心に傷を負っているかもしれないと思うと……タイミングがっ!!」
顔を真っ赤にしているベルジェを見て、ジュリエットは笑みを浮かべた。
「ふふっ、ベルジェ殿下ならばジュリエットを大切にして下さるでしょうから安心ですわ」
「……ルビー嬢は本当にいいのか?その、モイセスの事」
「わたくしはモイセス様とお話して頂けるだけで、嬉しいですから…………とは言いつつ、最近は欲が出てしまってお恥ずかしい限りですわ」
「ははっ……!ルビー嬢らしいな」
「はい!」
最近、こうしてルビーと話をしていて思うのだが、周囲が思うルビーのイメージと本当のルビーとは、イメージが違うような気がした。
悪口を言う事もなく、容姿を鼻にかける様子もなく、サッパリとしていて好感が持てる。
表情がコロコロと変わって面白くて、何より自分の気持ちに正直だ。
何故ルビーが令嬢達から嫌われているのか、正直理解出来なかった。
「あぁ、そういえば君が言っていたジュリエット嬢の好みと、今日言っていた好みが全く違ったんだが……」
「え?そんな筈は……。ジュリエットはいつも"わたくしだけを愛してくれる完璧な王子様のような方と付き合ってお姉様を見返してやる"って言っていたのに」
「ふむ……」
自分とルビーが知っているジュリエットと今のジュリエットは少し違うようだ。
「兎に角、少しでも異性として意識させるところからですわ……!」
「……それはどうやってするのだ?」
「だから、それは…………。そ、それを今から考えるのですわ!!」
「分かった!」
「自分の目的の為に頑張りましょう……!」
「……そうだな!次の手を考えよう!!」
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