不思議なカタマリ
黒い猫
第一話 黒いお兄さんと白い転校生
①不思議なお兄さん
「いってきまーす」
私『
そして、家を出て少し歩いたところにあるゴミ捨て場が集団登校の集合場所なのだけれど……。
「……」
――また「いる」や。
ここ最近はほぼ集団登校の度に「コレ」を見かける事が多い。
「……」
ただ「コレ」はどうやら私にしか見えないらしく、そして……ものすごく不気味だ。
――目とか手とかないただの『黒い霧』にしか見えないのに。
なぜか視線を感じるし、それがたまに強く感じる事もある。しかも、その「黒い霧」が見ている?のは大抵が小さな子供だ。
――思えば……。
実は物心がついた頃から私にはこの「黒い霧」が見える様になっていた。
しかし、両親にそれについて聞いても、そもそも「そんなモノは見えない」と言われてしまい、私が気を引こうとしていると言われてしまう始末だった。
──それにしても……。
「……遅いな」
どうしてか集合場所には私が一番に着いてしまう事が多く、いつも私は待つ事が多かった。
──でも。
こんな黒い霧がすぐ隣にいる状況を見せられるよりかは……まだマシだった。
──みんなには見えていないみたいだし。
しかし、私が見えているからこそ、その「黒い霧が小さい子の隣にいる」という怖い状況に気がつく事が出来るとも言える。
──ただ……。
ごくたまに「私にしか見えない」という事が無性に寂しく思う事もある。
「でも」
コレが「妖精」とかそういったものだったら……もしかしたら話は変わったかも知れない。
「……」
黒い霧は相変わらず私の方を見ている気がするけれど、目すらないから分からない。
──でも。
『いいかい? あいつらはこちらから何かしない限り何もしてこない』
これは私が「黒い霧が見える」と言って唯一信じてくれたおばあちゃんの言葉だ。
そして、おばあちゃんの言う通り私からこの黒い霧に対して何もしなければ、黒い霧は何もしてこなかった。
──でもたまーに。
ふと「こっちも見えている」みたいな態度を取ったら……なんて事を考えた事もある。
──まぁ、やらないけど。
なんて事を考えながら、地面の方を見て集団登校をする他の子たちを待っていると……。
「──こんにちは」
突然「上」から声が聞こえた。
「?」
私は「誰だろう?」と思いながら上を向くと、そこには黒い髪の長い男の人が私を見下ろしている。
「……」
髪は胸位の長さで、男の人にしては長いと思うけれど、でもついさっき私にかけた声は男の人だった。
──着物?
しかも、その男の人は珍しい事に着物を着ている。だけど、寝起きだからなのか少し着崩れている様にも見える。
「ん? ああ、これは失礼。寝起きなものでね」
私の視線が着物に向いていたからだろう。男の人はいそいそと着物を正した。
「ところで、ポストを探しているんだけど……知らないかな?」
「ポスト?」
そう言われて男の人の手を見ると、確かにハガキの様なモノが握られている。
──ポスト……か。
「えと、郵便局ならこのまま真っ直ぐ行ったところにあります」
確かその郵便局の前にポストがあっはずだ。
「ああ、ありがとう」
男の人は私にお礼を言って片手を軽く振って真っ直ぐ歩いて行った。
「あ」
そんな男の人と入れ替わる様に同じ集団登校の班の子たちが来て、その内の一人が私にコソッと「今の人、誰?」と尋ねる。
「知らない。ポストを探していたみたいだけど」
「ふーん、そっかぁ」
「?」
「ううん、大きくてかっこいい人だなって思って」
言われてみると……確かに大きかった。
──それに、かっこいい?
その子は男の人とすれ違った時に顔を見たらしい。私はそれ以上に服装に目がいってしまって顔までよく見ていなかった。
──あれ。
私はふと辺りを見渡したけれど……。
「かえでちゃん? どうしたの?」
「……ううん。何でもない」
あの男の人な話しかけられる前にいたはずの『黒い霧』が……きれいサッパリ消えてなくなっていた──。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます