ロンドンスモッグ

ロンドンスモッグ

　ここは、近未来。イギリス、ロンドンで、また、スモッグが発生した。

　人々は、黒い煙を恐れた。

その黒い煙に包まれると、明るい気持ちが消え失せ、心に闇が訪れる。

　人々は、不思議に思った。なぜ、先程まで明るく過ごすことが出来ていたのに、急に、暗い暗い闇が、訪れるのか。

　将来への不安、過去に受けたトラウマ、色々な思いが、頭の中を駆け巡る。

その闇は、人々から、全ての力を奪い、体が鉛のように、なってしまう。

　そして、黒い煙を受けていない人々を非常に羨ましく思うようになり、同じように出来ないことに悔しさが溢れる。そうすると、なぜか、黒い煙は、更に、そのように思った人々に、更に、纏わり付くようになる。

黒い煙に、包まれた人々は、徐々に疲弊し、やがて、死に至る。

　いや、違う。黒い煙の正体は、人々の心に巣食う心の闇であった。

　近未来、イギリス、ロンドンで人々のその闇が、可視化されるようになっただけであった。

　黒い煙は、元々、人々の心の中にあったものであった。

　　　　　　　　　　完