虹の根本のマスターキー
中村翔
日本~うみ(太平洋)
ピーポーピーポー。
救急車なら呼んだよだから・・・目を開けてよ!パパ・・・ママ!!
両親の死は突然訪れた。
「何が孫の顔が見たいだよ・・・だめじゃん・・・もう私一人きりだよ。」
両親はたくさんのものを置いてったけど時雨(ときさめ)の心を埋めるものはなかったのだ。
それでも気丈にふるまうのが自分の役目だと言い聞かせていた。
時雨・・・雨が時を刻む。そんな意味だったか。
私はあてもなくさまよっていた。
(公園か・・・。)
家の近くにあるよくあるような公園。
時雨はため息を置いてきたかのように腰を下ろした。
雨など降っていない。だけど世界は光を折り曲げて向かってくる。
こんなとこにいても仕方ないのに。
だけど足は動きそうにない。
だめだ。立ち直らなきゃ。ふと一粒の雨粒が腕を伝った。
??。
ふと上を見上げた。
虹。
まごうことなき見事な七色の虹。
だがとても儚い色に見える。
それはまるで自分の心を映す鏡のようだった。
(私の心か・・・。くすんで見えるな。)
私の色ならちょっとだけでいいその色で勇気を分けてほしい。
キラキラ☆キラキラ
上には蜘蛛の巣が張っている
「ははっ。こっちのほうがきれいに見えるや。」
雨粒がビー玉の様に透けて見える。
そうか蜘蛛の巣・・・埃が溜まってたっけ。
お父さんとお母さんの部屋。
最後に掃除したのは私が幼稚園の頃だったか。覚えてないけど。
・・・帰ろう。
私は帰路に就いた。
家に帰ってきたけどやることなんてない。
掃除?また今度ね。
今日はお風呂に入って寝よう。
カチっカチっ。
おやすみなさい。
――――朝
ふう。眠るだけで気分がいくらかましになった。
人間である以上欲求には抗えないということか。
学校・・・。行かない。今日はある所に行かなければならない。
自電車に乗り坂道を下る。
グングンギュンギュン。キキ―!がちゃん。
引き取り先の候補のお家。
私は18歳保護が必須な年齢ではないけれど望むなら保護してもらえるそんな小難しい年齢だった。
ピンポ――ン・・・。
がちゃっ。
出迎えてくれたのは優しそうなおば様そして今に通されると貫禄のある猫背のスーツ人が座っていた。
話は一応聞いてはいた。だけどどうしても父親の影を重ねてしまう。
カチッカチッカチッカチッ!
時計の音も気になる。どうして私がこんな肩身の狭い思いをしてしまっているのだろう。
おもうに父のせいだ。そうとしか思えなかっただから私は行動した。
「やっぱり。」
二人はきょとんとしている。
「私の両親は天国に旅立ちましたですが私の胸の中には両親が残っているのです
なのでやはり考えるに一人で暮らしたいと思います。」
遠くの方で虹が輝いていたのを覚えている。
引き取り先候補の家を後にして最後の親孝行を実行した。
パタパタ!もくもく。
はたきで叩くたび埃で視界がくすむ。
親孝行。それは両親の部屋を掃除することだった。
「ごほっごほっ」
九州の東の方ちょうど太平洋の見える街。そこが私の生まれ育った街だ。
視界がほぼゼロ。比喩じゃなくてホントに。
パタパタ!どんっ。
ガシャあ。
何かを落としてしまったようだ窓を開けよう何で気付かなかったのか。
がらがらっ!
ん、だんだん見えてきた。
オルゴール?いや、宝箱みたいだ。
中身が飛び散っている。
「あちゃー。割れ物なきゃいいけど。」
中身はごちゃごちゃしててあまりよくわからなかったがとりあえずしまっておいた。
ふと窓の外を眺めたがさっきまであったはずの虹は消え去っていた。
バシャ―ン!!
風呂の水を勢いよく頭にかぶるとわしゃわしゃと頭を洗うことにした。
しゃかしゃかわしゃわしゃ。
ざっぱーん。
気持ちよかった。父母の部屋もかたずいたことで肩の荷は下りた。
この家で暮らすにはどうすればいいか。
区役所のお姉さんが名刺をくれたっけか。
―――区役所
「すみません。このお姉さんはいらっしゃいますでしょうか?」
ふくよかなおばさまがメガネをかけて名刺を受け取ると
「少々おまちください。」
そういうと奥に消えていった。
(いきなりだったけど大丈夫なのかな・・・?)
「こんにちは。時雨さん今日はどのような用件で?」
息を吸い込むと言い放った。
「あの!保護の件ですが!お断りしようと!思って!」
お姉さんはフフッと笑うと
「では遺産相続の権利が発生します。相続しますか?」
いさんそうぞく?遺産ってあの遺産?
「具体的には何が相続できるんでしょうか!」
お姉さんは困り顔を作って見せた。
「鍵がない船舶が一艘です。カギにつきましては探しても見当たらないんですよ。
管理してる人はお父様になってましたしお家を探してみられるのはどうでしょう?
あっ相続税というものがかかりますが船舶に対してはモノですので税は徴収しませんので安心してください。」
書類にサインと印鑑を押して簡易的に手続きは終わった。
「では港にあるさきとめ号がそれにあたりますので管理の方をよろしくお願いいたします。」
たしかにそうか。相続はタダでも管理費はかかるのか。
明日の自分にまかせて今日は帰ろう。
そうだな。旅に出てもいいかもしれない。
考えておこう。
かちっかちっ。
おやすみなさい。
―――引き取り先候補家
「遺産相続をしたことを報告くらいしとこうと思ったので来ました。
カギがなかったことが残念でしたが父母の大切な遺産ですので相続しとこうとなりました。」
話し終わるとお茶を飲み干して立ち去ることにした。
?。お父さんの宝箱?ああー昨日のあれかな。なんかよくわかんなかったので閉まっておきました。
え?その箱に鍵が入ってるかも?お父さんが大切にしてたから?・・・ありがとうございます。探してみます。
大体そんな内容の会話をして家路についた。
宝箱は仏壇においてある。
少しとるのを躊躇したが手を合わせてからとらせてもらった。
かぱっ。
慌てて入れたからごちゃごちゃだ。
なんだこれ。コンパス?針がないけど。
昨日落としたときか。
二階へ上がり部屋のドアを開けて昨日ぶつけたところを探した。
あった!ん?なにか本棚の下にある。
・・・鍵とメモ書きが隠してあった。
鍵には文字が彫ってあった。
―――NIZI
ただの記号にしては豪勢に彫ってある形もちょっと鍵とは言えないけどな。
メモにはこう書いてあった。
虹の根本に鍵を供えろ。と。
裏にも何か書いてある『公園の水飲み場。』
公園?明日にでも行ってみるか。
ぱちっ!
電気を消して部屋を出た。
―――公園
水飲み場は二つある一つは丘になってるところもう一つは砂場の横。
鍵が見つかる最後のチャンスか。
でも鍵なんて誰かが持ってってもわからないじゃん。
あはは! がやがや! きゃっきゃっ!
平和だな。少し考えてみよう公園は小さい子もいるが大人ももちろんいる。
子供が遊んでいるのは砂場のあたりか。
大人は公園の端っこを歩いている。
子供と大人は行動範囲が違う?
水飲み場は砂場は子供、丘は大人が主に利用しているのがわかる。
大人・・・子供。
背の高さか?丘まで登る体力は子供にはない。逆はその限りではない。
つまり低いところを調べたら・・・。あっホントにあった。
父の適当さと悪知恵を思い知った。
―――港
でかでかと船の背にさきとめ号とかいてあった。
ガチャブルルルル。
掛かかった!いったん帰った着替えてまたこよう。
―――自宅
着替えてっと丈夫な服装に薄手のシャツ。これでよしっと。
―――港
行こう。ここには何も残ってないんだ。
・・・・・・。
―――引取り先候補家
「はい。旅に出ることにしました。のでお礼を言いに来ました。ありがとうございました。」
おばさんは何か言うでも引き留めるでもなくただ見送ってくれた。
空には虹がかかっていた。
―――さきとめ号
「これだけは持って行かなきゃね。」
ポーチにすっぽりと収まる大きさでよかった。
宝箱を持っていくそれ以外はおいてきた。
メモには虹の根本に鍵を供えよとあった。
「よし!しゅっぱつ!」
今は古き東の大海原―太平洋へと出発した。
―――太平洋
行き成りだが虹を見失った。
この海の中で何の目印もなく彷徨ったのはまずかったか・・・。
こんな時どうすればいいかなんて海に出たことのない私にはわからない。
(掃除でもするか・・・。)
こんな時でも掃除をしてしまう・・・性なのかもしれない。
ごしごし。さっさっ。きゅっきゅっ。
一通り掃除を終えたが、それにしても汚い。
一日夜二日じゃ終わらない自信がある。
(そういえば掃除してた時に見つけたんだっけ)
宝箱を開け中身を一瞥する。
(あれ?コンパス?そういえば針を戻すの忘れてたな)
コンパスに針を戻してから針の先を確かめた。
?。太陽の方向を指してる?
太陽は東から西へ・・・だったはず。
でも、コンパスは北を指し示すはずだから・・・。
コンパスの裏にもNIZIの文字があった。
「虹のコンパス??」
確かに出発した時は虹に向けて旅に出たはず。
ならコンパスの指す方に・・・。
「虹が出てくれればなあ・・・。あっ、」
カモメが頭の上を飛び立つ。その先にちょっと高めに虹が掛かっていた。
カモメが後ろからも来て魚をくわえて飛び立っていった。
ばしゃばしゃ!!
それに反応して魚の群れが弧を描きながら飛びつつ泳いでいく。
「トビウオかな?帰りの目印になりそう・・・。」
夕焼けに胸が焼けていく中、心に映像を刻んでいく。
(もう夏かあ)
暑さの中にも風節が見えた。
ここにいるのは私一人。そう思ったら胸がきゅんってなった。
太平洋を渡る間だけこの気持ちを持って居よう。
夕暮れが頬を慰める間、そう感じていた。
―――海
太平洋はとても広い。
そうまざまざと思い知らされたのは初めてだった。
・・・船に出会わない。
船どころかトビウオ意外の生き物すらいない。カモメさえも。
「だぁぁぁぁぁぁー-----!!!」
思わず唸ってしまう。そんな何もない日常。
コンパスは相変わらず真っ直ぐ進行方向を指し示している。
「はぁ・・・虹の気まぐれ・・・。」
古くからあることわざで虹を気にして虹に振り回される・・・そんな言葉だった気がする。
まさか自分がそうなるなんて夢にも思わなかった。
虹のばかやろー--!!そう叫びたくなるのをくっ、と抑えて水を飲んだ。
――――海
「果てしなく、続ける景色、追い越せぬ。」
こんな俳句のような歌が思いつくほどには暇なのだ。
せめて冬なら・・・いやだめだ。冬だと船から落ちることがつまりジ・エンド。
つまり夏だからいくらかはマシ・・・ということだ。
来た方を見てみる。永遠に広がる海。海。海。
普通なら頭がおかしくなっていてもおかしくはない。
「海を眺めるのが好きで助かった・・・。」
心底そう思う。そう、おもう。
―――――海
ふっ、やれやれだぜ・・・こいつにこんなに手を焼くなんてな。
ぐあぅ!この小僧!ナイフなんて仕込んでやがったか。
チンっ!ナイフが地面に落ちる。
くくくっ!このナイトラインさまに立てつくなんざ30年ほど早い早い!
ふっ。月光を背に浴びながら不敵に笑って見せる。
ナイトライン・・・それが貴様の名か?ならば俺も教えてやろう。
月光の刃。名をナイトハルトという!!
なに!?貴様、俺の名を語るということが無謀なことと知っているのか!?
貴様ほどではないよ。後ろをみたまえ。
!!。後ろにいた奴等が地べたに伏せてやがる。
貴様なにをした!?
男の手元にいたはずの少年はいつの間にか消えていた。
『君たちの命は貰った。』
カードを見た男が次に見たのは絞首台だった。
・・・私はすっかりと小説を書くのにハマってしまっていた。
これで17話目だ。最初はほんの少し書いて満足するつもりだった。だったのだが・・・このざまだ。
「気分を変えようかな。外の空気でも・・・。」
久しぶりのシャバはデカかった。
いや、シャバがではない。虹が、だ。
目の前には空高くアーチを描ける虹が聳えていた。
「ここが目的地・・・?」
確かめるためにコンパスをみた。
くるくると回っている。ということは・・・。
船の下を確かめる。陸地があるようだ。
からん・・・。
静かな空間に梯子の音が鳴る。
・・・人の気配がする。どこだろう?
行先はわからない。とりあえずは奥へ奥へと進んでみる。
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