タラッタラン

エリー.ファー

タラッタラン

 死を感じながら踊るというのが、一番楽しいのだ。

 言葉にしてはいけない。でも、嘘を信じてもいけない。

 つまるところ、体なのだ。

 そのタイミングでしか分からない、自分の感覚を愛するしかないということなのである。

 自分にしか見えない世界が、他人との境界に変わるころに、私たちは自分を見ようする努力が実るのを感じるのだ。

 過去がどうであったかを語るための口を失ってからが、本番ではないだろうか。今現在にしか私たちは存在していないのだ。

 間違ってはならない。

 何もかも巻き戻すことはできない。

 今、目の前で起きていることがすべてである。

 踊るように生きている。休憩するように死ぬしかない。実際のところ、誰もが、自分に死は訪れないと思っている。

 いずれ、遠ざかっていく現実との距離を肌で感じているはずなのに、その音を聞かないようにしている。

 忘れてはならないのだ。自分を形作っているものがなんなのか。それを他人に決めさせるのではなくて、そう。

 私の魂とは何なのか、あなたの魂とは何なのか。

 どんな匂いをしていて、どんな香りをしているのか。

 一瞬から始まるものはすべて紫の火花である。それが情緒にも近い、人生を彩るべき明かりであり、案内ともなる。

 言葉自体が外れていく感覚は、ダダイズム。殺しがはびこる言葉と言葉の隙間にはリアリズム。刻まれるべきなのは、滑稽な人々の影である。それを忘れてはならない。

 半分以上の狂乱が、才能を開花させる。努力などという言葉に騙されてならない。どんな場所にも聞こえのいい言葉しか吐かない老人が、右往左往している。見てはならない。彼らは見られることを目的としており、近づいてはならない存在なのだ。

 あなたのために言っている。

 他の誰でもないあなたのための言葉である。

 情報を精査する理が私たちには大切なのだ。

 反応だけが、真実を連れて帰ってくる。

 金が欲しいと思ってはならない。欲深さは敵だが、それがなくなれば、誰一人として前を向くことをやめてしまう。バランスではない。あなたの体が崩壊しないことを願うばかりである。

 今だけだと言い聞かせて我慢をしてはならない。いずれ、限界をこえた時に、誰かにその苛立ちを押し付けること以外の解決策を失ってしまうから。

 憧れをもってはならない。いずれ、抜かしていく存在ならばなおさら、現実を見なくなるための証拠を集めているにすぎないのだ。


「どうして、この場所にいるのですか」

「どうしても、ここから離れることができないからです」

「でも、最初は嫌だと言っていたじゃないですか」

「成長ができないんです」

「黙っていたって、寝ていたって、成長なんてするものじゃないですか」

「違うんです。努力の仕方を我慢以外に知らないんです」

「できないということですか」

「教えてもらえなかったんです。だから、我慢してきたことを自慢するしかないんです。我慢せずにどこかに行ってしまう人たちを逃げたと表現する以外に、自分のプライドを守る方法が分からないんです。自分の人生で結果を出すんじゃなくて、結果を出した他人を見つけて来て、その人の失敗や行動の矛盾を指摘する、残飯の漁り方以外に自尊心を高める方法を知らないんです。教えてください。方法さえ分かればどうにでもなるんです」

「教えてもらわないとできませんか」


「あなたも、ああいうやつらと同じ人種なんですね。結構です。もう、あなたのことが嫌いです。どこかに行ってください」


「我慢をしたいのですか」

「何がですか」

「我慢することで、自信を身に付けたいのですか」

「違います」

「でも、あなたに我慢以外に得意なことなんてないですよね」

「ないですね」

「では、我慢をしなくなったあなたに、何が残るんですか」

「何も残りません。我慢できるということがすべてです」

「我慢をしたくないのに、我慢以外の生きる道を知らないわけですね」


「控えめに言って、地獄ですよ」

「かなり控えめに言ってその通りですね」

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