I:me─アイム─
@esora000
前日譚─1
「わたくしは気付いたのです。生きる意味とは、
いつか向かえる死を、納得して受けいれる為に問われることなのだ。と」
ステンドグラスから射し込む逆光を背に、大きく手を仰ぎ彼女は語る。
「今日も始まったね、ミトナの演説……」
教会椅子に座らされた中の一人がボヤいた。
「よ!ミトナ教祖!今日も絶好調だね〜」
「ぜっこーちょーだね〜っ!」
次から次へ出てくる不満の声をなんの意にも返さず演説は続く。
彼女らにとっては、あの日から。
青の侵食によって研究施設のほぼ全員が飲み込まれ、この廃校に七人で避難してきたあの日から、毎朝続くお決まりの光景だった。
「もうそろそろ慣れてきたわね、この光景も。いいじゃない朝のルーティンって感じで。ぼくは結構好きだな。」
「シセ……アンタってほんっっとにトンデモ肯定野郎ね……」
そうやってひとしきりぼやいている内に本日の演説が終了
軽く会釈し、まばらな拍手の中講壇を降りるミトナに本日も、小走りで向かう小さな影が一人。
「さすがですミトナさま……!今日も素晴らしいお告げをありがとうございます!」
「おはようレノン。今日も熱心に聴講して偉いですね。貴女は敬虔で美しい。
天国へ行くためにこれからも励んでくださいね。」
そう優しく頭を撫でられ、溢れる笑みで返す彼女に
「ねえレノン?本当に、気をつけなさいね……」
若干哀れみの混じった心配の声がかかるが、ぷんっと頬を膨らませる。
「もう!ユノはいっつもいっつも!信仰は自由なの!わたしの勝手なの〜!」
「そうだぜユノ〜、自由にさせてやりな。そいつなりの正義なんだ。」
そう庇う声にすかさずユノは返す
「ハルマだって『今日も絶好調だねぇ〜〜!!』とか言って茶化してたクセに」
「そこまでな嫌な言い方してないだろ!?」
わいわいと、そんな他愛もない言い合いが講堂に響いて行く午前8時。
今日も無事一日が始まった。
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